ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Veronica*返信100参照900突破・オリキャラ募集中 ( No.111 )
- 日時: 2011/01/16 11:35
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: 7Qg9ad9R)
- 参照: ヽ(*´∀`*)ノ
「おー、ヘル。意外に遅かったじゃないのぉ」
「黙ってくれないかしら、ロキ。わたくしこれでもきちんとエンジェル・ダストを生成してきたのに」
若紫のカールを揺らしたヘルが得意気に手から宝石を出す。それをロキと呼ばれた男は白けた目で見ていた。
「まーまー、ロキよぉ。ヘルがちゃぁんと生成してきた訳だから赦してやれよ」
野太い男の声が響く。赤々と燃えるぼさぼさの髪に同じ色の髭を蓄えた筋肉質の男が橙の髪を後ろでポニーテールにした男の肩をポンポン叩いた。赤い方は紫紺の目をしている。
「トーール、それで良いのかァ?見てりゃ襲われてたんだぜ、コイツ」
橙の髪のロキは、呆れた翡翠の目と右手の人差し指をヘルに向けて喋る。
「失礼ね、此方はマーリンの様子を見てきたというのに……」
自分を指す手を然り気無く手で払う。
大理石で出来た、薄暗い空間に乾いた一定の音が響く。———足音、だ。
漆黒の闇の中から、白いぼうっとしたものが現れる。白金の長髪を靡かせた、色白のラズリ種が空間内に入り込んだ。
「————お、ウェルちゃんじゃない」
ロキがにやにやしながらラズリ種の女性を見た。いや、この場では女性というより少女と言った方が正しいかもしれない。この空間にいるものの年齢差を考えれば明らかに世代が違うのだから。
「ウェロニカ?」
ヘルがラズリ種を見た。その視線を返すウェロニカは蒼の目を陰らせた。
「———フリッグ、と殺り合ったのね」
髪と同じ色の瞳を妖しく光らせ、ヘルは答える。
「相変わらず冷めてたわよ、貴女の昔からの彼氏。
やっぱり記憶消えてるみたいね〜。昔使えたお得意の″四連魔法陣″ですら使えなかったし。
ウェロニカ、貴女はどうよ。千年ぶりに昔の記憶とか戻って。転生した恋人との、違った再会」
ふふん、と鼻を鳴らしたヘルの言葉に、変わらず冷めた視線のウェロニカはぼそぼそと喋る。
「———そうね。この前の再会時の彼は、私が出会った頃のフリッグと同じだったわ」
その冷めたウェロニカを、ロキはまたにやにやとしながら見ている。つり上がった口が言葉を紡いだ。
「大魔導師フリッグ=サ・ガ=マーリンが唯一気を許した女性、巫女クリュム。
恋仲同然の仲の割にはあっさりとした再会だったの?何、ハグも無ければチューもナッシングな再会だったわけ?」
「使用危険用語オンパレード止めて。
皆テンション高くて、発言が掲示板の削除対象ぎりぎりだって作者言ってるんだから。
それに私は、″今は″ウェロニカだから」
抑揚の無い喋り方でウェロニカは静かに答える。「つまんねぇなぁ」とロキは唇を尖らせた。
そのやりとりをまるで裂くように、赤髪の男トールが割り込む。
「ま、止めとけ二人共。ウェルが来たっつーことは、ファウストからなんか言われたんだろよ。な、ウェル?」
トールに振られたウェロニカはコクりと頷いた。
「そう、ファウストが呼んでるから。皆集まってるそうよ。
ヘルはエンジェル・ダストを出して。次はスノウィンにある神器が目的だから誰行くかって話し合うってね」
トールに応答したウェロニカは振り返り、入ってきた所へと戻って行く。それを見て、ロキは頭を掻き毟りながら仕方なくウェロニカの後についていった。
<Oz.8:Sign-夜想曲(ノクターン)に誘われて->
ぱん、という乾いた音。銀の銃口の先に見えるは白金の髪の″アイツ″。
「オイッ、こんな所で喧嘩するなよ。フリッグ、お前もうじゅうろ———」
右目を軽く髪で隠した、蒼い目の男が喋っている最中であるにも関わらず、何かに取りつかれたようにフリッグはその人間に向かって体当たりをした。
右手をチョキの形にする。相手が行動するより先に、フリッグの右の人差し指と中指が整った顔立ちである男の鼻の二つの穴に容赦なく挿入された!
「〜〜〜〜コノヤロぉっ……!良くもやってくれたなぁ、オイッ!!」
憎悪に満ちた翡翠の眼球が男に向けられている。『オイッ』という声と同時にフリッグの足が男の腹を蹴り上げた。その光景を、口を開けてただ呆然とリュミエールとフォルセティは眺めている。
「ウェスっ……!!」
憎しみが篭った声を響かせるフリッグ。彼の怒りは明らかに男に向かっている。
蹴り飛ばされた衝撃で地面に躰を打ち付けたこの男———ウェスウィウス・フェーリア・アリアスクロスは乱れた白金の髪を整えながら立ち上がった。
ウェロニカの父違いの兄である彼は、ラズリ種とカーネリア種の混血児なのだ。ラズリ種特有の尖った耳は持たず、右目が血のように紅い色をしている。二つの種の特徴を持ち合わせているのだ。
「———あれの件か?」
恐る恐る訊ねたウェスウィウスに、フリッグは眉間に皺を寄せた顔を大きく頷かせた。
「ベテルギウスは民宿だわ、ペット料金取るわ、お前は来ないわ、と!!ついでにパイルドライバーもかけさせろ!!!!」
怒号を上げるフリッグの声に耳を塞いだ。
ウェスウィウスは苦笑いを浮かべる。取り合えず、その場を茶化した。
「あ、あ、えー。話すこととかはあれだ!中で、中でな!!」
彼はそう言うと、そそくさと扉の中へと入っていった。
「あ゛!逃げるのか!?」
怒鳴り声を撒き散らしながらフリッグも入っていく。
何が何だか分からない、残されたメリッサらはポカンとしていた。
「君たちも行こうか」
背後からしたその声にメリッサとレイスは振り向く。いつの間にかフレイは自分を縛っていた紐を解き、立ち上がっていたのである。
* * *
ウェスウィウスを追ったフリッグの目には、見知らぬ者たちが入った。
紅色の髪、それと同じ色の瞳をした、落ち着いた風貌の女性。その隣に居るのは、人間の様に立つ銀狼。蒼の短髪をし、紫紺の鋭い目をフリッグに向ける軍人女性———。
フリッグの頭の中が白くなる。その白は靄のように彼の頭に広がり、思考力を奪っていた。何も考えられない。
「君がウェスの義弟子か?」
右目を髪で隠した白いブラウスの紅髪の女性に唐突に声をかけられ、フリッグの心臓が一瞬停止する。
「………」
言葉が出ない。
元来見知らぬ人間と関わることが苦手なフリッグは、今までリュミエールやレイスと何故ああやれたのか不思議に感じた。今の様に人に対してちゃんとした受け答えなど出来ない筈なのに———。
「そ。それが俺の弟フリッグ。んで、首に居るのがポチ」
代わりに答えたウェスウィウスの声に安心感を得た。紅い女性は納得したように何度も首を縦に動かしている。
「ポチ?失礼な!己れはポチでは無い!!」
ポチという単語を聞いた狼が野太い声を張り上げた。ビリビリと空気が揺れる。
「ちゃうちゃう」混血児が宥めるように、目を瞑りながら手を横に振った。そしてフリッグの首に寄り添う子竜を指した。「これがポチ」
「なら良いか。全く、失礼な奴かと思ったぞ、ウェス」
銀狼はがっはっはという豪快な笑い声を上げた。気分が変わるのが早いものだとフリッグは呆れ半分でその様子を眺めていた。