ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: デットマン・プリズン ( No.10 )
日時: 2010/12/16 17:49
名前: 桜音ルリ ◆sakura.bdc (ID: DnOynx61)

そこにいたのはお兄さんともお姉さんともとれない顔をして、黒いかみのけをうしろでむすんで、めずらしい赤い目をした人だった。
その人はぼくを見てなきだすほかの人たちとちがって、小さく頭を下げるとぼくをしっかりと見つめた。

「レイカ・クリムゾンだ。」

レイカさんはそういうとだまった。
ぼくとレイカさんはしばらくだまってじっとみあっていた。
しばらくするとレイカさんはガラスごしでもわかるくらいに大きなためいきをつくと、なにかのかみをとりだした。
ぼくがそれをじっと見ていると、レイカさんはそれをくるりとひっくりかえした。
そこにかかれていたのは、じめんから生えている、たくさんの黒い手。
まぎれもなく、おかあさんをつれさった手だ。
ぬめりと光るひょうめん。
赤い光をだしているものから巨大なくぎがささっているものまでたくさんある。
レイカさんはかみをじっと見ているぼくにむかってまたためいきをついた。

「悪魔の手だ。」

そしてもういちまいかみをとりだす。
そこにえがかれていたのは、体中にけっかんをうかび上がらせ、そこから血を流していて、足はなかった。かわりにかわがたれ下がり、ふよふよとただよっている。
めははたてにみひらかれていて、白いはずのぶぶんが赤くなっている。
鼻と耳はうもれていて、すこしだけ見えるくらいだ。
服はきちんときているけど、それもごてごてと色々なかざりがついて、とてもきたない服。
そんなおばけだった。

「魔界の六ノ魔王だ。名前を知っているな?」

ぼくは、しらない。とこたえようとしてことばをつまらせた。
ぼくはたしかに、このまおうのなまえをしっているんだ。
いつなまえをきいた?
まわりがまっかっかで、グレイシアがたおれてて————おもい出した。

「ナイト、メア・カース……」

ぼくのことばをきくと、レイカさんはまんぞくそうにうなずいた。

「詳しくはお前が此処を出たら教えてやる。」

でも、でられそうにないよ。
そういおうとしたけど、それはレイカさんにさえぎられた。

「嘘はついてはいけないと習っただろうが、嘘をつけ。『おばけなんていなかった。実は犯人を見ていた。』とな。そうすればアイツらは、悲しみと折り合いをつけることを教えてくれる。じゃあ、まってるぞ、ブライグ。」

ぼくはレイカさんのことばにうなずいた。



この日、僕は大人になった。