ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: デットマン・プリズン〜オリキャラ募集〜 ( No.30 )
日時: 2011/01/19 20:00
名前: 桜音ルリ ◆sakura.bdc (ID: gNDvmwjP)
参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_m/view.html?577463

Scene4【魔法と魔術とそして禁忌】

「……さて、そろそろ落ち着いただろう。……お前に、話さなければならない事がある。」

いつになく真剣な顔。
僕はレイカさんのその表情に身を強張らせた。
そして、少し、視線を彷徨わせてから、覚悟を決めて頷く。
レイカさんはにこ、と微笑むと、その深紅の瞳を細め、僕を見た。

「お前は、タバサがなんだったのか知っているか?」

タバサ……お母さんがなんだったのか、か。
僕は首を横に振る。
レイカさんはそうか、と呟くと、深いため息をついた。

「……信じられないだろうがな、お前の母親は……タバサは……魔術師なんだ。」

魔術師、魔法使いの事だろうか。

「魔法使い?」

僕がそうやって尋ねると、レイカさんは首を横に振って、「魔術師だ。」と繰り返した。
そして、雪のように白い大理石のテーブルに視線を落とし、ため息をつくと、ぎしりという音を立てて椅子から立ち上がる。
そして、暖炉とテレビ、そして本から遠ざかり、何もない壁際に行く。

「魔法と魔術の違い、見せてやろう。」

レイカさんはそういうと、ふっと目を伏せた。
黒髪がレイカさんの真っ白な肌を覆い隠す。
そして、レイカさんはカッと目を見開くと——反対側の壁にあった斧を引き寄せた。
刃の方が真っ直ぐに飛んでくる。
そして、それはそのまま飛んできてレイカさんの左腕を切り落とした。
レイカさんは一瞬、一瞬だけ顔を苦痛にゆがめると、斧の柄を持って、床におろす。
レイカさんはこっちを見て苦笑すると「心配するな。」と言ってきた。
たぶん、今の僕はひどい顔だったのだろう。
レイカさんは僕が頷くのを確認すると、血まみれになって未だに血があふれ出ている左腕を見やり、そしてそこを右手で勢いよくつかんだ。

「ぐ、ぁ。」

レイカさんが声を上げると、ボコボコという音とともにレイカさんの左腕が生えてきた。
ちぎれた左腕と洋服の血の跡は消えてなくなった。
僕はぎょっとして思わず後ずさる。
レイカさんは、そんな僕を見て一瞬、悲しそうに笑った。
だが、次に見たときはいつもどおり(別にそんなに長く付き合っているわけではないが)のレイカさんだった。
そして、レイカさんは斧を壁に掛けなおすと、生えてきたばかりの左腕をぐるぐると回して動かす。
そして、床に少し滴った血をハンカチでふくと、暖炉の中に投げ込んだ。

「……鉄を引き寄せる。人体の再生。これが魔法の力だ。」

僕のほうを向いてそういうと、レイカさんは今度は僕の手をつかみながら何かをぶつぶつと呟く。
そして、次の瞬間。僕は叫び声をあげた。
何故なら、僕の両手が花になっていたからだ。
レイカさんはまた何かをつぶやくと、さっと僕の両手に手をかざす。
そうすると、両手の花は消えてなくなり、いつも通りの僕の腕があった。

「……草木、炎、闇、雷、水、氷、星、月、大地……まだまだたくさんの自然の力に共鳴する呪文を唱えるのが魔術だ。」

僕は目の前で起こったことが信じられずに呆然としつつも、こくこくと頷いた。
レイカさんはそんな僕を見てまた席に座るように促す。
どうやら僕は興奮のあまり知らず知らずのうちに立ってしまっていたらしい。
僕が促されるままに座ると、レイカさんも椅子に座りなおした。
テーブルに手をかざし、呪文を唱える。
すると、木製のコップが現れ、その中は見たことのない緑色の液体で満たされた。

「リョクチャというものらしい。私はこれを好んで飲んでいる。」

体に良いぞ、と笑顔で進めるレイカさんに今は遠慮しておくといって、コップをレイカさんに渡す。
レイカさんは少し残念そうな顔をするも、それを受け取って一気に飲み干した。
そして、飲み干してからふぅ、とため息をつくと、しっかりと僕を見据えた。

「魔法と魔術の違いを理解してもらったところで、そろそろタバサが犯した禁忌と、ナイトメア・カースと…………グレイシアの秘密を教えてやろう。」

僕はグレイシアという名前が出てきて動揺しつつも、ゆっくりとうなずいた。
レイカさんはそんな僕を見て満足げに笑った。