ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

エピローグ ( No.1 )
日時: 2011/01/15 11:31
名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: l2k0mPFo)

エピローグ


 ——どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
 結局、何を手に入れた? おれの全てだったとも言える、友を失った。そして、何を手に入れた?
 考えても何も浮かばない。傷が痛む。かなり血が出ているようで、心臓が傷口にあるみたいにどくどく言ってる。
 自分と親友の血を眺めながら、回らない頭で思いをめぐらせる。
 あいつも、こんなものを見ながら死んでいったのだろうか。

 立ち上がる気力さえなくしていたおれに、誰かが近づいてくる。顔を上げると、ついさっきおれが撃ち抜いた、親友がいた。
 まあおれの射撃の腕じゃ、どこに当たったものか。
「病院に行こうぜ。傷をどうにかしないと」
 全てを受け入れ、全てを諦めたような口調だ。おれには出来ない。
「……そうだな。この程度の怪我じゃ死ねないか……」
「で、治ったらどうする?」
 ……?
「またどこか行くか?」
 ……。
 どうやらおれは、何もかもを失ったわけではないようだ。
「……どうして」
「どうしてって——」
 そいつは、返事に困ったように苦笑いする。
「親友じゃないか」
 それを言われてしまうと、おれも何だか色々とどうでもよくなってくる。
「そうだな。……ある程度治ったら、速ければ明日にでも、あの木のところに行こう。たとえこの先おれ達がバラバラの道を行くことになっても、あの木のところで絶対にまた会おう」
「ああ。絶対だ」

 上空では、太陽がようやく雲の隙間から顔を出していた。明日は、あの日のような晴天だろうか。
 まったく、忌々しいったら。