ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 第一話 ( No.2 )
- 日時: 2011/01/15 11:31
- 名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: l2k0mPFo)
第一話 「大富豪からのメッセージ」
快晴だった。
空には雲ひとつなく、鳶が弧を描いて飛んでいる。見事な青のグラデーションで染められた空はそれはそれは澄んでいて、吸い込まれてしまいそうだ。青々とした桜の葉が風に揺すられている。ただ一人空に存する太陽が放つ光は、地表を焼き焦がそうとしているようでもあった。
しかしオレ達のいる場所に、その光は届かない。
「——うわっ。こけるところだった。なあケリー。本当にこの先であってるのか?」
「間違いないからもう少し待てって」
「そうだシュウ、その辺段差があるから気をつけ……って、遅かったか」
オレ達三人は真っ暗な洞窟の中にいて、各々手に持っている懐中電灯の明りを頼りに進んでいる。中はとても狭く、大人であれば、もう少し成長してしまえばオレ達でも通れないほどだ。
もちろん立ち入りは許可などされていないのだが、そんなことを気にするオレ達ではない。ただ身を危険にさらすだけの要らぬ勇気だけは伊達じゃないのだ。ただ好奇心のみに忠実にこの洞窟へ入り、かなり奥まで進んできた。
オレが調べた、かつての小説家であり画家でもある大富豪のK.ジョウンが作った遺跡がこの先にあるかもしれないという情報も、それを後押しした。
時には中腰で、時にはカニ歩きで、そして時にはほふく前進で。
「光が漏れてる!」
そうこうしているうちにオレの目はかすかな光を捉え、思わず言った。
その言葉にシュウもレオンもオレと同じ様に疲れを忘れたようで、三人そろって速度をあげた。毎日退屈に生きて少しでも刺激を求めて自ら危険に身を投じるオレ達にとってその光は、ただの物理的な意味での光ではないはずだ。
ぼんやりと光の出口の輪郭が見えてきて、それはどんどん大きくなる。ちょうど正面だ。オレのせいで、後ろの二人はよく見えてないんじゃないだろうか?
いち早く狭い場所を抜け、光の下にたどり着いたオレは、レオンとシュウを催促した。
「早く来いよ! 本当にあった!」
「やってるさ!」
シュウが言って、二人もその場に立つ。
目の前には、巨大な石の建造物があった。