ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 彷徨い人の十字路 ( No.11 )
- 日時: 2010/12/04 15:31
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
路地を抜けたそこは下町よりも風紀の悪そうな……スラム街のような所だった。
廃人同然の人や化粧の濃い姦婦が居て青年は思わず顔をしかめる。
しかしとりあえずは平静を装い、歩く事にした。
……正真正銘の“悪魔”である彼にその程度の事など、全く気にはならない事だからだ。
彼の名はゲーデ。生死を司り、死者を復活させたり成仏させたりあるいはゾンビにしたり出来る。
そして死者から知識を貰う事が出来てとても賢く聡明な悪魔でもあった。
そんな彼は世界中の生死の均整を守る為、世界中を旅しつつ死者の生死を決めるのが使命でもあった。
先ほどの杖は死者の心の中へと入れる魔力を備えており、出て来た霧は心を表すものだ。
「……この辺、か?」
ゲーデは片眼鏡をポケットへと再度しまうと辺りをまた見回す。
見えるのはドラッグを吸う廃人達と男を捜している姦婦のみで彼の探して居る者は見当たらない。
……さて、どうしたものか。彼は溜息を着きながら適当なところを歩き始めた。
コツッ
何かを蹴った感触がして下を向くと廃人では無い、既に息絶えている少年が居た。
探して居る者はこの少年だったらしい。彼はまた膝をついて少年を見つめる。
散々暴行されていたのか少年の体には痣だけで無く血まで滲んでいた。
飴色のような綺麗な金髪は埃と石がかかっており先程の少女よりも痛々しい様子だった。
青年は今日何度か分からない瞼を閉じる動作を行うと畳んでいない杖をそのまま少年に当てる。
少年の頭からは少女と同じ淡い水色の煙が出て来た。ゲーデもまた手を伸ばし意識を失い
また、淡い霧のかかった十字路へとやって来た。
そしてすぐに少年がやって来て中央から歩き出す。
ちなみにこの十字路はどう対応するかの示しであり、先程の少女の南は成仏させる事を司る。
南へ行く人間が多く、多い順に西、北、東……となっているのだ。
こう言うスラム街などに居る者は大抵南か西へ行くパターンが多い。
ちなみに西は大罪を犯した者が多く、ゾンビとなり無理やり生きさせると言う生き地獄を司る。
しかし、少年はあろうことか東へと歩き出した。
(……何!?)
——————東。それは半死半生。罪を犯していない人間外の血が流れている者が行く道であった。