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Re: 彷徨い人の十字路 ( No.20 )
日時: 2010/12/05 09:41
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)

顔をほころばせるライトに、歩数を合わせながら歩くゲーデは左手を再度顎に当てていた。
何を考えているかと言うと、ライトの過去と出生である。
捨て子と言うならスラム街に居る事は納得できたが、何故親がライトを捨てたのかと言う事にあった。
人外の血が流れて居る者はどれも共通して“子”を人間達の群れへ無用心に離そうとはしない。
人間とは違い団結意識がとてつもなく強く、それでいて異様には群れない習性を持つのだ。
しかしライトは捨て子だと言っている。けれど種族的にそれは有り得ない。
……一体何があったのか。ライトは誰にも聞こえないよう小さく溜息を着いた。

「ゲーデ……」

ふと名前を呼ばれ、左から後ろを振り返るとライトが好奇心に目を輝かせたような表情でこちらを見ていた。
視線を辿ってみると先程自分の杖をしまった燕尾服を見ている。
……しかし何が言いたいのかは分からなかったのでとりあえず聞いてみることにした。

「どうした?」
「さっきの十字路って……何だったのか知ってる……?」
「!? ……あ、あぁ……」

ゲーデは目を見開いてライトを見つめた。しかしとりあえず語尾を濁して頷いておく。
さっきの十字路……死んだ者の行く末を示す十字路の事だ。
しかしあれを歩いている人間は意識が無く、生死を操れるゲーデのみが意識があるはずなのだ。
当然、人外の者でも例外ではなく皆十字路の存在自体知らないものだった。
しかしライトはそれを見たと言っていた。つまりそれは……

ライトにもゲーデ同様の生死を操れる力があるかもしれないと言う事だ。


「ライトには……それが見えたのか?」
「うん。淡い霧がかかってて、杖を持ってる人が多分ゲーデだったと思うんだけど、全部見たよ」
「そうか……ならお前にはますます旅をする価値があるだろうな」

とりあえずそう言って微笑むと、ライトは顔をぱぁっと輝かせ、満足そうな顔をして歩き出した。
そんな顔を見れてゲーデも満足だったのだが、内心純粋には喜べないものがあった。

もしライトに自分同様の生死を操れる力があるとするならば……この先ライトは人としては生きられない。そんな事が頭に過ぎったからである。
何故そうなのかと言うと……それはゲーデ自身も今自らがそれを痛感しているからだ。
何がと言われればそれは今は応えられない。と言ったところか。

……今はその事を考えるのはよそう。ゲーデは小さく首を横に振り淡い微笑みを見せながら歩みを進めた。





この時、この瞬間が後々の世界を大きく変える事など全く知らずに……

† 第一章 「ゲーデ」と言う名の悪魔 † 終