ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 彷徨い人の十字路 ( No.26 )
- 日時: 2010/12/05 12:25
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
† 第二章 墓地の男爵 †
その後、ゲーデとライトはスラム街から下町へと戻り適当なホテルへと泊まり就寝した。
ゲーデは旅慣れで別に寝なくても良かったのだがライトが疲れている様子の為ホテルへと行ったのだった。
案の定、ホテルへ着きベッドへと飛び込んだライトは特に言葉を発する事無く安眠していた。
ゲーデはそんな様子のライトにやや穏やかな気持ちになりつつホテルにあった木で出来た椅子へと座る。
椅子はクッションの一つすら無いものだったが木材自体が滑らかなのか特に痛みは無かった。
そして椅子から北方向にある窓を開けると涼しい夜風が部屋へと入って来る。
ライトを起こさないようにしながらゲーデは涼んでいた。
「共に旅を……か」
ゲーデは一人そう呟いてから椅子に背を掛けて前後に揺らした。
そしてコバルトブルーの空を見つめながら口に淡い笑みを浮かべる。
「……悪くは、無いか……」
そう言って寝ているライトの方を見ながら嬉しげなため息と言う複雑な動作をした。
そして突然椅子から立ち上がり、窓枠を両手で掴みながら窓の下を覗く。
見えるのは赤煉瓦の歩道と視力の良いゲーデには見えた青緑色の草。人は全く居なかった。
「……よし」
ゲーデはそれを確認したかと思うとふぅ、と溜息を着いてシルクハットを取ると窓枠へ足をかけて
足から窓の外へと急降下していった。
急降下に伴い吹き荒れる風に髪を逆立たせながら彼はとんでもないダイブをしていた。
常人であれば叫んでいたところであろう。しかしゲーデは慣れた様子でダイブして行き、歩道へと足をつけた。
トンッ、とジャンプから降りたような軽い音でどうやら足は骨折していない様子だった。
「人がいなくて幸い、か……」
そう言って髪を撫で下ろし苦笑すると歩道を歩き始めた。
その足取りは何処へ行くかを明確にしているかのように特に迷いは見えない。
そして暫くすると彼の横に閉店している店の中で唯一まだ灯りのある店があった。
仕立て屋なのか店のショウウィンドウには赤、青、黄、緑、紫、青……様々な色の布が飾られている。
ゲーデは特に迷う事無くその店の中へと入った。
カランカラン……♪
扉を開けた瞬間、鳴り響くベルの音にカウンターにいた店員は裁縫している手を止めゲーデを見た。
ゲーデは店員に一礼してからカウンターへと近づき金の入っている袋を置いてから話し始めた。
「今からローブを仕立てられませんか? ……なるべく早めに頂きたいのですが」
店員はじっとゲーデを凝視してから深く頷いて店の奥へと行った……。