ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 彷徨い人の十字路 ( No.32 )
- 日時: 2010/12/16 06:39
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
どうやら深く頷いたのは「YES」の意味だったようで店員は暫く出てこなかった。
特にせかす事も無くゲーデはじっとその場に立って待っていた。
十分後、仕立てにしては早いと思ったが店員はローブを持って無表情でゲーデにそれを渡した。
黒色の綺麗に縫われたローブは飾り一つ無いがシンプルでとても良い物だった。
ゲーデは微笑んでまた一礼すると店から出てホテルへと帰路を進めた。
そしてすぐにホテルの入り口へと着くと案の定扉は閉まっていた。
ゲーデはふぅ、と溜息を着いたかと思えば今度はジャンプをして
飛び始めた。
着ている燕尾服が風にはためき髪が今度は下に押しつぶされるかのように下がって見える。
しかしゲーデはまた気にせず開いたままの窓枠に両手をかけよじ登り部屋の中へと戻って来た。
そして椅子の近くに置いてあったハンガーにローブをかけて吊るしておいた。
「明日の朝は凄い事になりそうですね……」
ゲーデはそう呟くと夜風に当たりながらまた空を見つめていたのだった……。
そしてその空を同時刻、見つめて居る者がいた。
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「こんな国……大嫌い」
コバルトブルーの空を見つめながら、ダブルベッドの上で頬杖を着いた少女は呟いた。
場所はクロア・フェモーレと言う騎士国。この世界において名を知らない者は居ないであろう有名騎士団「バロン・クロス」を持っている国でもある。
そんな国に居るこの少女はクロア・フェモーレ国の中でも位の高いヤクネス家の姫、リーフェルトだった。
そんな彼女に一体どんな不満があるのか……。
「悪魔でも何でも……私を助けてくれないかしら」
リーフェルトはそう呟き、頬杖を着くのを止めてベッドに顔をうずめた。
ふぅ、と着いた溜息は前にロンドンでゲーデの着いている溜息に酷似しているようにも思えた。
リーフェルトはベッドにうつ伏せになっている姿勢を仰向けにして再度空を見つめる。
空には白色の小さな星がポツポツとかかり、実に綺麗なものだった。
「…………」
リーフェルトはふと黙って空を見つめていた。唇を横にし、無表情になっている。
そして右手でまた頬杖をかきながら静かに目を閉じた。
リーフェルトとゲーデが出会うのはもう少し後の話だった。