ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 彷徨い人の十字路 ( No.38 )
- 日時: 2010/12/07 18:37
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
- 参照: http://梓桜です
淡い霧がかかり、例の十字路が見える。ライトは一回自分の目を擦った。
しかし毅然として変わらない風景に自分がおかしくなったのではないと安堵している様子だった。
ゲーデはシルクハットを目深に被りながら淡々と説明を始める。
「まず、この十字路は死者をどうするか決める為の示しだ。死者が通った道にそって対応をする」
ゲーデがそう言った途端に仕立て屋の店員が現れた。突然の光景にライトは息を呑む。
老人の目は何処か虚ろで生気を失った顔をしていた。そして突然歩き出す。
ゲーデは杖を上に上げてそれを上下左右に動かしながらまた説明を始めた。
「北なら復活させ、南なら成仏させる。西ならゾンビとして蘇らせ、東なら半死半生とみなす」
言葉を理解しようと必死で聞いているライトをよそに、店員は南へと歩みを進める。
成仏させる。ライトはゲーデに言われた言葉を思い出しながら生唾を飲み込んで店員を見つめた。
ゲーデは突然店員の後を着いて行き、肩を押さえると再びライトの方を見つめて話し始める。
肩を掴まれてもビクともしない店員に、ライトはやや怯えつつも必死で話を聞いていた。
「そして判定の決まった者は……この杖を額に当てて、そうさせる」
そう言うと同時にライトは店員の方を片手で掴み、もう片手で杖を上に持ち上げた。
そして店員の額に杖を当てると、店員は瞬く間に白色の淡い光と化す。
ライトはまた突然の光景に驚きながらも光をじっと見つめている。
光は何処か軽やかに南の道へと進んで見えなくなった。……と、それと同時に視界も真っ暗になる。
本日何度目か分からない驚きにライトは顔をしかめるとあっと言う間に元の店へと着く。
ゲーデはシルクハットを一旦脱ぐと店員の死体があった場所に片膝と着いて両手を握った。
ライトはそれにつられてややぎこちないながらもゲーデと同じ動作をする。
しかし瞬く間にゲーデはすっと立ち上がりライトは再度混乱する嵌めになった。
「……大体分かったか? これが私……ゲーデの仕事だ」
こくりと素直に頷くライトに苦笑しながらゲーデは自分の頬を掻いた。
そして今度は手袋を脱いで片眼鏡をかけると突然店を出る。
ライトは首を傾げながら着いて行くと、ゲーデはふとライトの方を振り返りまた苦笑しながら話し始めた。
「あぁ、言い忘れてたな……次はどうやってその死体を見つけるかについて説明しよう」
……一見するととんでもない説明だが、ライトは自分でも奇妙に思えるほど自然に聞けたのだった。