ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 彷徨い人の十字路 参照130突破しました!! ( No.52 )
- 日時: 2010/12/16 06:58
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
閑話休題「裏切られた日」
「姫様……」
「嫌よ! 絶対に嫌!!」
腰まである長い金髪を揺らし、リーフェルトはあらん限りの声を出して拒絶の意を示す。
そんな彼女の近くにいた銀色の鎧を纏う兵士は困惑した表情を見せ、彼女を見ていた。
何故、彼女が此処まで拒絶をしているのかと言うと、今日あるとある儀式が嫌らしい。
「王族としての挨拶です……農民が跪くのが見たくない、と仰られましても……」
「絶対に嫌! 農民に跪かせてのうのうと挨拶するなんて、父上見たいな奴がする事よ!!」
そう言ってリーフェルトは兵士の顔から視線をずらし、空を見つめた。
空は今のリーフェルトとは大違いなほど清々しい晴天で暖かい日差しも出ている。
……父上みたいな、馬鹿な王……。
リーフェルトはそっと唇を噛んだ。
ちなみに今日は王族、つまり次の王位次期後継者であるリーフェルトの挨拶式がある。
その挨拶式にはこの国では尤も権力の無い農民も勿論参加する。それを彼女は嫌がっているのだ。
暖かいとは言え、農民は田を耕している。その労働をたかが自分のせいで邪魔するのは……と思っている。
リーフェルトは農民を大事にしない父親、つまりヤクネス王が大嫌いだった。
「…………そうですか……」
兵士は顔を伏せながら重々しい声で返事をしていた。
リーフェルトはそんな兵士を横目で見ている。
この兵士はヤクネス王が王位についた途端、一番最初にへこへこしだした奴だ。
当然、リーフェルトは彼が嫌いだった。憎いほどに。
「何があっても、やる気は無いわ」
「分かりました。……ですので、
死んでもらいます」
兵士はそう言うと禍々しい表情で剣を抜き出し、リーフェルトに突きつけた。
突然の事にリーフェルトは混乱しかけたが、何とか理性を取り戻し叫ぶ。
「意味が分からないわ!? どうして貴方に殺される必要があるのよ!!」
命の危機が迫っていても、こればかりは聞いておきたい。
そんな思いが通じたのか兵士はニヤリと笑い出した。
「邪魔だったんだよ!! 俺の利益的になぁ!!!」
「…………え?」
リーフェルトは思わず呆然とした。
しかし男は未だゲラゲラと笑い続けている。
利益的に……邪魔?
言葉を復唱したくなった。
利益的に邪魔だと言われ、何故かとても傷つく気がした。
「農民が可哀想だぁ!? 俺ら兵士にとっちゃあんなの奴隷に過ぎねぇんだよ! 農民の事を考えてる王女なんて、邪魔すぎるぜ!!!」
……私が邪魔……?
リーフェルトは、思わず涙を零していた。
決して悲しかった訳では無い。悔しかったのだ。
こんな自分の事しか考えない男に殺される自分が。悔しくて悔しくてしょうがない。
刹那、赤い血が舞う。
彼女は一瞬にして意識を失ったが、最期。
この城を、魔力を使い、爆発させた。