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Re: 彷徨い人の十字路 参照130突破しました!! ( No.56 )
日時: 2010/12/17 18:51
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)

  第三章「ありがとうと言われた日」


「っ……!!」
「大丈夫か…………?」


無数の死体。しかもそこら中に腕や足が散乱し、草草は鮮血で染まっている。
そんなおぞましい光景にライトは思わず吐き気を催した。

何で、こんな…………。

吐き気と共に自分に対する不甲斐無さも感じたが、とりあえずゲーデの問いに対して頷いておく。

……ゲーデには成るべく心配は掛けたくない。

そんなライトの考え故の頷きでもあった。
そしてゲーデはそんなライトを見て一応は大丈夫である事を確認すると歩み始める。


「……何処へ行くの?」


吐き気から出て来た酸味が強すぎる胃液を何とか飲み込みつつ、ライトはゲーデの後を歩く。
そしてそんな事を聞くとゲーデはシルクハットを深く被りながら、告げた。


「この城の爆発は異様だ」
「異様? 爆発に異様なんてあるの?」


城は確かに元々豪華だったであろう綺麗な形を木っ端微塵とでも言えそうな程破壊されていた。
そして所々辺りは焼け焦げ、そして死体も沢山ある。しかしライトにとってはあまり異様では無い。
何しろクロア・フェモーレ王国は騎士国。しかも辺りにある他国を領土にしている国だ。
そんな国なのだから領土の国からの反発で爆竹や反乱があったのだとすれば納得は行く。

しかしゲーデは爆発した城を変な物を見るかのように、まじまじと見つめていた。


「……まず兵士の鎧がバロン・クロスと言うこの国の所持している騎士団の鎧のみだ」
「あ、本当だ……」


ゲーデが突然足をピタリと止める。すると其処は恐らく門だった筈の瓦礫が落ちている場所だった。
当然死体も数多く、ライトはおぞましさに再度吐き気を催しつつも鎧を確かめる。
確かに鎧はバロン・クロスの象徴である銀色の十字架が彫ってある鎧のみ。

……何で遠くからでも分かったんだろう。

ふとゲーデに感心しつつライトは納得と言う意味でこくりと頷いた。


「次に……これだ」


そう言ってゲーデはある瓦礫の付近に落ちていた銀色の十字架を拾い、ライトに見せる。
一応スラム街に居たライトが見ると分かるのだが、かなり高級品だった。


「これはクロア・フェモーレ国の王か次期後継者が着けるもので……」


言葉を途中で濁しつつ、ゲーデは膝を突いてふと倒れていた兵士に十字架を押し当てる。
すると兵士は十字架が当たった瞬間、あの十字路で見た光のようになって消えた。
思わず言葉を失ったライトに、ゲーデは話を続ける。


「魔力を持っている……だから私はこの爆破はこれのせいじゃないかと思うんだ」


その言葉に、ライトは反論をする事は特に無く、静かにうなずいた。