ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 処刑人斬谷断 オリキャラ募集終了&採用オリキャラ決定 ( No.10 )
日時: 2010/12/10 21:45
名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)

プロローグ

東京—某所



今にも崩れそうな廃墟の周辺に、SATとロゴが入った服を着ている男たちが身を潜めている。

彼らは警視庁特殊部隊SATの制圧班である。

SATは、主に重大事件の対処に当たる部隊で、今回はヨーロッパで悪名をとどろかせているテログループが潜伏しているとの情報を得て、出動する事になった。

現場突入を担当する制圧班は2班あり、制圧1班、制圧2班と分かれる。

そして、制圧2班に今回が初任務となる男がいた。

彼の名前は、斬谷断。

2年前、他の多くの隊員と同じ様に、彼は機動隊から志願してSATに入隊した。

2年間、訓練ではほぼ完璧ともいえる成績を残した断であったが、いざ本物の任務となると勝手が違う。

作戦が始まる前から、断は早くもその事実を痛感していた。

銃を持つ手が震える。

「おい、大丈夫か」

すると、横から制圧2班班長の北川が声をかけてきた。

「は、はい…大丈夫です」

断は上ずった声で答えた。

「緊張しているな。今回が初任務だったな?」

「はい」

北川は小さく笑うと、断の肩に手を置いた。

「大丈夫だ。訓練どおりにやれば、かならずできる」

そう言われて、断は少し力が抜けるのを感じた。

顔から緊張の色がなくなっていく。

「よし、行けるな?」

「はい、行けます」

「よし」

北川は無線機を取り出した。

「こちら制圧2班。制圧1班、応答せよ」

『制圧1班、どうぞ』

「こちらの準備は完了した。いつでも突入できる。そちらはどうだ?」

『こちらの準備も完了している。90秒後に突入だ』

「了解」

無線機を戻し、北川は制圧2班の方を向いた。

「情報を再確認する。進入口は2つ。西側と東側。俺達は東側からだ。見張りは1人。狙撃班が倒すから、見張りが倒れ次第速やかに突入する。いいな?」

班員達が次々に「了解」と言った。

「よし、45秒後に突入だ」

北川はそう言うと、廃墟の方を向いた。

どんどん近づく作戦開始時刻に比例して、断の心拍数も上がっていく。

あと25秒……20秒……15秒……

汗が全身から噴き出す。

銃をもう一回握りなおしてから、断は大きく息を吸った。

ゆっくりと息を吐き出したとき。

「突入開始!!」

北川の合図とともに、制圧2班は廃墟へと突入した。







狙撃班が倒した見張りの死体を乗り越え、進んでいく。

しかし、テログループは一向に反撃してこない。

(………気配がない。逃げたのか?)

断は廃墟内を捜索しながら、どんどん不審感を募らせていった。

そのうち、他の班員達も次々と疑念の声を漏らし始めた。

「どういうことだ……?」

「作戦が漏れていたのか?」

「落ち着け! 本部と連絡を取る!」

北川が無線機を取り出した。

「本部応答せよ。こちら制圧2班。現場にテロリストの姿は確認できず。繰り返す、テロリストの姿は確認できず」

ところが、本部は応答してこない。

「本部? 聞えているのか? 応答せよ、本部。応答せよ」

みるみるうちに北川の表情が曇った。

「本部からも応答がない」

「何かあったんでしょうか?」

班員の1人が尋ねた。

「さあ、それは—」

その時、いきなり声が響いた。

『爆弾だ!!』

一斉に班員が無線機に目をやる。

「どうした、制圧1班?」

「廃墟内にC4爆弾が仕掛けられていた! これは罠だ!! 全員退避させろ!! 繰り返す、全員たい—」

そのとき、真っ白な光が部屋を包んだ。

断は自分の体が浮き上がるのを感じた。

目の前に壁が迫り、同時に意識を失った……












この事件は、マスコミに「廃墟の悲劇!? テログループと警察の特殊部隊全滅」という見出しでしばらくの間ワイドショーを賑わわせた。

そして、この事件の真実は闇に葬られることとなったのである。