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Re: 処刑人斬谷断 第28話更新!! 企画募集開始!! ( No.61 )
日時: 2011/04/23 15:01
名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)

第29話 「奇襲」

「………それで、何をすれば良いわけ?」

白峰がアダムを睨みつける。

「そのデータが何かお分かりですか?」

アダムは答える代わりに、問いを投げかけた。

「………日本のインフラの緊急時用動力の起動データね」

白峰は憮然とした表情で答える。

「その通り。それを全く逆の効果を得られるように設定して欲しいのです」

「つまり、このデータ1つで全ての施設を無効化させるようにしろってこと?」

「ええ。あなたにしか頼めない仕事です」

そう言いながら、アダムは白峰の耳元に口を寄せた。

「断れば、被害はあなただけに留まりませんよ?」

白峰は怒りに顔をゆがめたが、すぐに表情を消した。

「引き受けるわ」

「ふふ………感謝します」

アダムは不気味な笑顔を浮かべて、目まぐるしく変わり始めたパソコンの画面を見つめた。
















「あとどのくらいっ?」

薬師寺は電話に向かって大声を上げた。

『3キロだ。次の角を左に曲がれ』

薬師寺は近くに車が通っていないのをいいことに、危険極まりないスピードで青のスカイラインを爆走させる。

「………見えたぞ。あそこだ」

紀伊が前方の古びた校舎を指差した。

「……!」

薬師寺は目にも留まらぬ速さで腕を動かし、スカイラインを急停止させた。

反動で投げ出された紀伊と夢見はしかめっ面をしたが、何も言わずに外へ飛び出した。

『マッドガール、数分前に怪しい奴がそこに来てる。注意しろ』

「了解」

通話終了ボタンを押し、薬師寺もドアを開けた。

すでに紀伊と夢見は校舎内に突入していた。

「アダムもここに来てる………か」

嫌な予感を抑えながら、薬師寺も駆け足で校舎内に潜入した。














「……誰か来た」

白峰がボソリとつぶやいた。

「……誰です?」

「知らない。男1人に女2人。監視カメラに映ってた……何しに来たってのよ……」

「ふむ…………データは?」

「終わった。複雑だったのは最初だけで、あとは素人でもできる作業だった」

言いながら、白峰は改造したデータをアダムに渡した。

「ご苦労様です。さて………お邪魔な人たちにはここらへんで消えてもらいますか」

















「命、どこに行けばいいの!?」

「3階の音楽室! 電力が使われているのはそこだけ! 階段上って左よ!!」

「了解っ!!」

夢見は階段を駆け上がり、数秒で3階まで達した。

「音楽室………あれだ!!」

音楽室と書かれた看板を見つけ、夢見はそこに向かって猛ダッシュした。

「………鍵かかかってる! ……こうなったら…うおりゃっ!!」

夢見は担いでいた大剣を抜き、思い切り扉にたたきつけた。

扉はあっけなく吹っ飛ばされ、夢見は音楽室に入った。

「…………えっ!?」

目に飛び込んできた光景に、夢見は言葉を失った。

遅れること数秒、紀伊と薬師寺も音楽室に入ってきた。

「………!!」

2人も入るなり、顔色が変わった。

そこにあったのは、起動させっぱなしのパソコンと、目を見開いたまま事切れている少女の死体だった。

「まさか、この子が白峰凛……!?」

搾り出すように、薬師寺が声を出した。

「額を打ち抜かれてる………用済みだから、消したってことか…」

紀伊が悔恨の表情でつぶやいた。

「………ねえ、あれ何?」

夢見が白峰の死体のそばに置かれた物体を指差した。

「あれは………」

紀伊が近寄って物体を確かめる。

物体にはタイマーが付いており、残り時間は5秒となっていた。

「…! 爆弾だ!! 逃げろっ!!」

言うや否や、紀伊は爆弾を放り出し呆然としている2人を突き飛ばしながら音楽室から飛び出した。

その瞬間、轟音と共に爆弾は爆発し、爆風に3人は吹き飛ばされた。














「くくく……うまく爆発したようですね」

校舎の外で爆発を見届けたアダムは、ニヤリと笑うと、きびすを返した。

そして乗ってきた車に乗り込み、ノートパソコンに改造したデータが入ったSDカードを差し込んだ。

「さて…………どうやら新たな邪魔者も動き出したようだ。封じさせてもらいますよ」

パソコンを操作し、必要なコードを入力する。

「まずは電力…………落とさせてもらいましょう」

そう言うと同時に、アダムはエンターキーを押した。