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Re: 処刑人斬谷断 第29話更新!! 企画募集開始!! ( No.62 )
日時: 2011/04/24 20:05
名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)

第30話「逆襲」


相変わらずインフルエンザで療養中の断は、違和感で目を覚ました。

違和感の正体は直ぐに分かった。

「電気が………」

そう、つけっぱなしにしていた電灯が消えていたのである。

(ブレーカーが落ちたんじゃないよな………停電?)

疑問が沸きはじめ、断は体を起こして窓の傍に歩き、カーテンを開けた。

天候は快晴。落雷の様子などは無い。

「まさか…………」

断の頭の中に1つの仮説が浮かび上がる。

そして、その仮説は当たっていた。





アダムにより、日本全国の電気が止まったのである。












「ちっ! 電気を落としやがったか!!」

ジョーカーは小さく舌打ちをした。

机の上をまさぐり、探り当てた懐中電灯のスイッチを入れると、ジョーカーは壁にある「自家発電」と書かれているスイッチを押した。

すると、真っ暗な部屋に明かりが戻った。

ジョーカーは急いでパソコンの起動スイッチを押し、薬師寺が持っている携帯に電話する。

数回コールしても出ない。

「まさか、やられたんじゃないだろうな……」

留守番電話になってしまったことを確認し、ジョーカーは電話を切った。

そして輝きを取り戻した液晶画面を睨みながら、猛烈な速度でキーボードを叩き始めた。

















一方、アダムの仕掛けた爆弾で吹き飛ばされた3人は、爆発から10分ほどして、ようやく意識を回復させた。

「くそっ………」

最初に紀伊が悪態をつきながら立ち上がり、残りの2人を助け起こした。

「ひどい目にあったわ………」

「ホントだよ。最初はただの犬探しだったのにぃ〜」

薬師寺と夢見も口々に不平の言葉を言う。

「文句は後だ。薬師寺、ジョーカーに電話を」

「ええ、分かったわ」

薬師寺はポケットから携帯を取り出すと、ジョーカーにかけた。

『無事か?』

ジョーカーはワンコールで出て、開口一番不機嫌全開の声で言った。

「何とかね。アダムに爆弾仕掛けられたの」

『ああ、今13分前の衛星画像で確認した。とんだ災難だったな』

「全くよ……それで、アダムの居場所は分かる?」

『奴は今……ああ、まだ都内だな』

「都内……場所の見当は付く?」

『多分北川浄水場だろ』

「……ずいぶんあっさり答えたわね。知ってたの?」

『奴は電気を止めてすぐに水道も止めようとした。だから俺が先回りしてお前達のいる校舎から一番近い、北川浄水場のデータを書き換えて奴をおびき寄せたんだ』

「そういうことね…」

『そういうことだ。早く行ったほうがいい。データの書き換えがバレれば奴は逃げる。衛星がカバーできないところに行かれたらアウトだ』

「分かったわ」

薬師寺は電話を切りながら走り出した。















「……ここですね」

アダムは北川浄水場の門の前に立っていた。

「あの、どちら様でしょうか?」

アダムを見つけた警備員が駆け寄ってくる。

「ああ、私は水道局のものです。実は今、各地で水が止まってしまいましてね。様子を見に来たんですよ」

アダムは本物の役人さながらの作り笑いをしながら答えた。

警備員はいぶかしげにアダムを見つめる。

「昔事故で顔に火傷を負いまして……仮面で隠してるんですよ」

「そうなんですか……ではどうぞ中へ」

「ありがとうございます」

アダムは警備員に一礼すると、浄水場に入っていった。











『もう見えてくるころだ。見つけたか?』

「ええ、見つけたわ」

『7分前に奴が入っている。まだ出てきてないからこれが最後のチャンスだと思え』

「了解。突入するわ」

薬師寺はスカイラインを強引に路肩に寄せ、外に飛び出す。

「ちょ、ちょっと誰ですかあんたたち…!?」

警備員が門に突進してくる3人を見て血相を変えた。

「紀伊君!」

「分かった……麻酔銃だから勘弁してくれな」

紀伊は懐から麻酔銃を取り出すと、警備員に向かって発射した。

「うげっ………」

警備員は地面にばったりと倒れた。

そして3人は警備員の体を乗り越えて門の中へ入った。











「ふむ………特に問題ないようですね……」

制御装置を見ながら、アダムは内心焦っていた。

(誰かがデータを書き換えている………邪魔者は消えていない、ということでしょうか………)

「そうですか。わざわざ様子を確認なんて、ご苦労様です」

浄水場の責任者が愛想笑いをしながら言った。

「いえいえ。これが仕事ですから……」

「それでは、失礼させていただきます。どうぞあなたも、他のところに回ってあげてください」

「ええ………しかしその前にやることがありますから、もう少しだけここにいます。よろしいですか?」

「? ええ、構いませんが」

「ありがとうございます」

アダムはそう言うと、制御装置に再び近寄った。

(早くデータを元に戻さないと………)

アダムがドライバーで制御装置の外板を外そうとしたとき—




「そこまでだ、アダム!!」





「………!?」








アダムが声のしたほうへ振り向くと、そこには薬師寺、紀伊、夢見の3人が立っていた—