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【第壱話】黒蝶は鮮やかに舞う @1 ( No.2 )
日時: 2010/12/26 21:31
名前: 氷兎 (ID: 8hgpVngW)

「よぉ!!イリヤァ、酒持って来いッ」
「こんにちわ、隼音さん。酒持って来ましたァ」

そう言って手渡したのは、ウイスキーの瓶に入ったご存知“黒烏龍茶”である。
いや……だって皆酒癖悪すぎるし……。皆は何も怪しまずにそれを飲んで、

「ぶほォッ」……吐き出す。

全員わたしの方を睨んでくる。
きゃー、わたしって人気者ー??

「テンメ……ッ、イリヤァァ!!」
「そんなことで争わないでくださー」「んなことじゃねーだろォ!!」

これがわたしのいつもの日常。何も変わりない、穏やかな日常である。
勿論、ここは廃ビルで、見付かったら大騒ぎかもしれないけど、ここに来る輩は悉く巻き返しているので心配無用。

皆が怒って瓶や缶やら投げてくる。それが、わたしのウサ耳に当たって、形が歪む。

「耳の形を歪ませないで。……折角キマってたのに」
「ヒィッ」

いや、ヒィッて失礼でしょ。
皆が怯えてわたしを見てくる。ちょ、ボス、何でアンタも怯えてるんですか。

「もうこんな事しないでよねー」
「はいッ、了解しましたァ!!」

実は、歳の割りに、入ったのはわたしが一番最初だったりしちゃう。だから、ボス以外はわたしの後輩で、わたしの言う事は聞いてくれるのだ。

「……あら」
「イリヤ、どーした」
「そこ、ちょっち壊れてない??」

わたしが指差した所の窓は、半壊にされてて今にも落ちてきそう。そして、窓ガラスから手榴弾が投げ込まれ、爆発する。

「うわッ」
「イリヤ、扉開けろッ」

……あーぁ、普通の平凡な日常の筈だったのにな。

「そーゆー事じゃ、ないんじゃないかな??」
「……は??」
「ほら——」

わたしの目線の先の窓には……、裏企業『緋蜘蛛』の、ボスが佇んでいた。