ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

【第壱話】黒蝶は鮮やかに舞う  @3 ( No.8 )
日時: 2010/12/26 21:32
名前: 氷兎 (ID: 8hgpVngW)

「あ、」

わたしは着物の中に手を突っ込んで、雑誌を取り出す。真っ二つになっていて、体にもうっすら傷が出来ていてびっくり。

「ボスごめん。雑誌斬れた」
「俺のがァァァッ!!」

ボスが真っ二つに割れた雑誌を前に四つん這いになり、項垂れる。この人がボスな事を恥じる。

「しっかし、残念だね。わたしを倒せなくて悔しい??」
「……これで倒せるとは、思ってない」
「そっ」

わたしは彼が居た方に木刀を構える。だが、彼は一瞬でわたしの後ろに移動した。わたしは木刀で対応するが、木で勝てるわけも無く、木刀を過ぎてわたしの肩まで到達する。後ろに避けたから致命傷は免れたものの、着物の右袖が全部切れてて少し肌寒い。

「……っ」

木刀も折れた、腕にも腹にも傷を負った。絶対絶命なこの状況下で、わたしは覚悟を決める。

「イリヤっ?!」

ボスが声を上げる。わたしは目を瞑って彼の攻撃に備えている。彼は何も気にせずわたしに突っ込んでくる。

「……finish」「させるもんか」

彼の太刀筋が、わたしを完全に捉えた矢先、わたしは彼の懐に蹴りをお見舞いする。彼は胃液を吐き出し、わたしを睨む。

「……負け、ちゃった」

彼はわたしの言葉に納得できてないみたい。少しばかり時間がたったところでわたしの耳に小さく吐息を吹きかける。息が荒いから結構ダメージは負わせたっぽい。

「……茶堂、藤」

彼の名前らしき言葉が脳に届く。だが、さどー君の一撃が効いていたみたいで意識が遮断される。


その時、感じた妙な違和感は一体誰の、どのような違和感なのか。
わたしにはそれが、分からなかった。


「……、どこかで……」


——貴方、誰?