ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 【第壱話】黒蝶は鮮やかに舞う @4 ( No.9 )
- 日時: 2010/12/26 21:30
- 名前: 氷兎 (ID: 8hgpVngW)
「依里弥姉??」
誰かがわたしの顔を覗き込んでいる。わたしは重くだるい身体を起こし、声の持ち主を横目で見る。
わたしが拾ってきた子供の一人、ゴスロリ娘の白嵜永夢だった。わたしは捨てられた子供を見ると、何人でも拾ってくるので『蝶羅』には子供の割合が多いイ。
「えーむ」
「何ですか??」
「ボス……隼音さん、は??」
永夢は凄く冷めた目をしてから奥が見えるように身体をどかす。わたしの目に映ったものは、優雅に酒を飲む隼音の姿だった。
わたしは傍に置いてあった小石を隼音の頭目掛けて投げつける。見事に命中して、隼音は頭を擦る。
「いってぇな……あ、起きた」
「起きたじゃないよ、『緋蜘蛛』さんは??」
「……帰ったよ。しっかり約束までしてね」
隼音は静かに俯き、睫に影が出来る。ふと下を見るとコートの裾が焦げており、黒く汚れている。
「ちょ、依里弥姉、身体休めねーといけませんよ」
「んー、いいや。いらない」
わたしは立ち上がって隼音の前に立ち、コートに手を伸ばす。ウサ耳が少しばかりへたれていて気にくわないけどまあそれは置いといて。コートを持って先程わたしが寝ていた布団の上に座る。
「さいほーどーぐ持って来ーい」
「え、は、はいっ」
「どーも、ありがとさん」
隼音は何するの、っていう事と寒いんだけど、っていう事を目で伝えてくる。わたしは黒い糸と長針を取り出してボロボロになった所を縫い始める。
「……別に、いいのに」
「いやいや、気になるのだよ」
——わたしが『蝶羅』を守れなかったから。
言葉が出てこなかった。悪いのは間違いなくわたしなのに、なのに、皆の優しさに浸ってばかりで。
「あ、そだ」
「依里弥姉、どーしたんですか」
「ねぇ永夢、ちょっと探して欲しい人が居るんだけど」
「……??」
わたしは永夢にある人物の名前を書いた紙を渡す。永夢はそれを受け取って、戸惑いながら返事をした。
「承知しました……」