ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 【第弐話】黒蝶は頑なに籠る @3 ( No.12 )
- 日時: 2010/12/18 00:08
- 名前: 氷兎 (ID: 8hgpVngW)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode
「こんなもん、ですかなぁ」
俺は男の屍の上に座り、疲れたと疲労を漏らす依里弥をジッと見つめる。
合わさった視線を直ぐに逸らし、屍の背中を見る。
「あ」
「え、何々、どしたの」
俺は男が着ていたTシャツを剥ぎ取り背中を見る。
「なーに」「……違う」「何が」
俺はもう一度上に座りなおし、固くなった首を解しながら依里弥に告げる。
「こいつら、伏兵[フェイク]だよ」
「えー??」
納得してるのかしてないのか。それとも意味が分かってないのか。
まあ、咎められるよか全然マシなんだけど。
「あらラ、どーせそんな事だろーと思って見にきたら本当にそうとはネ」
「……倫埜」
そこには俺等『緋蜘蛛』のボス、斉泰 倫埜が居た。また派手な服を着ていて目がチカチカする。
45歳のオッサンのくせに、よくやるよ。
「ありゃりゃ、こんちゃです」
「あラ、こんにちワ、依里弥ちゃン♪」
『聖天使』本社社員なら必ずあるという天使の翼の刺青が無かった。
「抜かったわネ、『青蜘蛛』チャン」
「うっさい」
あからさまに嫌そうな顔を向ける。
倫埜はやれやれと手を上に向けて「参った」と身体で表現してくる。あーきもちわるい。
「マ、戦闘要員が減るのはいいかしらネ♪」
「んでさ、わたしはどーすりゃいーわけ??」
「ンー、ちょっと『緋蜘蛛』まで来るかしラ??」
「はいよーぅ」
元気良く手を上げて笑顔を見せた依里弥。
つーか、こっから『緋蜘蛛』拠点までは遠いと思うんだけど。
すると倫埜は全く逆の方面の西に歩き始めた。
「おい」「何かしラ??」「そっち方向違う」「合ってるのヨ」
倫埜は『聖天使』拠点だった廃倉庫の横にある小さな小屋に入っていく。
そして、小さな小屋の床にある隠し扉を開ける。
「ここから行けるのヨ、十分くらいで」
教えて貰ってないし。何か言ってたような気もするけど多分気のせい。
倫埜は口角を上げて俺を見てくる。
「忘れてんでショ、貴方」
「教えて貰ってない」
「ソ♪これで覚えなさいヨ♪」
絶対見抜かれた。遂には依里弥にも笑われる始末。
「何」「藤きゅんぱ、かわいーなーって」「黙れ」
あと藤きゅんぱって何だ。
そうこうしている内に十分足らずで着いた。んで、入り口とか、通路とか、もう忘れた。
「はい、ここが『緋蜘蛛』ヨ♪」
「……うにゃっ、ふりょーさんばっかですな」
顔に傷入ってたり、腕相撲とかで力比べしてたり、本物の殺し合いしてたり。
本当に、此処に始めてきた時はびっくりした。正直尻餅つきそうになった。
「わたし、力とか自信ないんだよねぇ」
聞いてないけど。
そう言ったら頭殴られた。つか、俺等敵じゃなかったっけ??
「ネ、お願いがあるんだけド」
「何かにゃー」
俺は聞いてないよっていう視線を倫埜に送るがガン無視される。
「今から此処で死んでくれると有り難いんだけド」
依里弥は倫埜の言葉に眉一つ動かさずに
「ヤです♪」
と笑顔を向けた。
倫埜はそれに笑顔で返し、俺にアイコンタクトで後は好きにしろと送ってきた。
「残念だったワ、……ネ♪」
俺に向けるな、俺に。
別に、依里弥ごときが死んだって比じゃないけど。
でも死んで貰っちゃ困るんだよ、色々とさ。