ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 【episode @1】聖なる夜は貴方のために ( No.35 )
- 日時: 2010/12/26 21:45
- 名前: 氷兎 (ID: 8hgpVngW)
- 参照: クリスマス短編です。
じけんから、ちょーど一年前の冬でした。
今日は12月24日、クリスマス・イヴです。
わたしは朝の7時におめざめで、おにーちゃんはいつもどおり寝てます。
さっきおにーちゃんのお部屋から「犯すぞ、てめー」とか聞こえたけど、10歳のおとこのこがそんな事を言うはずがないのでスルーします。
リビングにいくとおかーさんがおいしそーなスクランブル・エッグを作ってまっていた。
「良かった、マナが起きてくれて。一人で食べるのは寂しかったから」
「うん、おかーさんおはよーございますー」
おかーさんはお気に入りのピンクのエプロンを着たままスクランブル・エッグをほおばっている。ハムスターみたい。
わたしはスクランブル・エッグにドレッシングをかける派なのでよく振ってからかけてほおばる。
おかーさんがニコニコしながらわたしを見るので、わたしはちょっと照れます。
おかーさんはとても若くてきれーなので女の人でもきんちょーしてしまいます、ほんとです。
おかーさんは一度おはしをおいてわたしのほうを向く。
「今日はほら、この前家に来たマナの彼氏クンと一緒に過ごすの??」
「そーだよーっ、だいじょーぶ、マロくんのおかーさんが居るからって言ってたし」
おかーさんは「ならいいの」ってまた食べるのを再開した。もうおりょーりの半分も食べてておかーさんは大食いだなーって思いましたとさ、終わり。
昔話になっちゃった。まだ終わりません、続きます。
「あしたはおかーさんといっしょだかんねっ」
「うん」
おかーさんとニッコニコの笑顔でおやくそくをして、ゆびきりげんまんをして嘘ついたら相手のほほをつねることにした。
わたしはサンタさんの服を着てマロくんのお家に行く事にしたのだ。
ちなみにサンタ服はおかーさんの手作りなんです、うちのおかーさんは器用なのですとじまんしてみます。
「んじゃー、行くとしますかっ」
とちゅうで何度かこけそうになったけど無事マロくんのお家に着きました。
インターホンをジャンプして押して、しばしのあいだげんかんの前で待った。
「もー、マロくん出るのおそいー」
「……マナが早いんだよ。まだ8時20分だよ」
「いーのいーの、それほどマロくんに会いたかったのさーっ」
てきとーに言って時間をまちがったことをごまかす。
てっきり8時かと思ってちょっとおくれたなーとか思ってたのにー。
「俺の部屋で待ってて」
そう言ってリビング横のじぶんの部屋をゆびさした。
わたしは指された方向にてくてく歩いていく。
マロくんのへやには、なんていうか、生活感がなかった。
ぜんぶまっくろのおへやに、飲み込まれそうなほどに。
勉強机も、カーテンも、本棚もパイプベットもシーツも枕カバーもかけ布団もカーペットもぜーんぶ黒かった。
どうしてこんなに空虚で寂しいのか、それに、居るといっていたマロくんのおかーさんも居ない。
「おかーさんは??」「居ないよ」「なんで」「マナと二人がいいから」
サラッとこっぱずかしーことを言うな、マロくん。
マロくんはてなれた様子で、コップにお湯を入れてコップを温めている。
横にココアのふくろがあるからココアでも作るんだろう。
ピーッという音がきこえて、マロくんはお湯をすてた。そこにココアの粉を入れて沸かしたてのお湯をそそいでスプーンでぐるぐるかきまぜている。
それをローテーブルの前にもってきて「はい」とわたしにさしだしてくれた。
わたしは「どうも」と受け取って飲む。……めちゃめちゃ熱かった。
「ほら」
マロくんはじぶんのお膝をポンポンとたたいて「おいで」の意思をしめしている。
わたしはそれに逆らう事なくのる。二人でだきあう感じでだ。
マロくんの身体は、氷みたいにつめたかった。
その冷たさはわたしのはだに鳥肌がたつほどだった。
でも、数十分すわっているとホワホワ温かくなった。わたしがマロくんにすわっていたおかげだぞー、かんしゃしろーと心で言う。
マロくんはわたしの頭をなでている。それも、ずーっと。
「まーろくんっ」「何」
マロくんはわたしの頭にあった手をほほにもってきて今度はほほをなではじめた。
「らいねんもこうしてらぶらぶしよーねっ」
「うん、もっとらぶらぶしよう」
マロくんもわたしも人生最大のえがおでニコニコする。
今日はいい日だ。おかーさんもわたしもマロくんもニコニコしている。
おにーちゃんは寝ているときニヤニヤしててきもち悪かったな。
「うーん、マロくんはぬくぬくですなーっ」
「ありがと」
そう、
——また、来年も。
end__...