ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

【第六話】黒蝶は眩しさに酔う  @2 ( No.60 )
日時: 2010/12/30 16:00
名前: 氷兎 (ID: 8hgpVngW)





それから1年の歳月が過ぎた。
隼音と一緒に歩いていて見つけた廃ビルでわたし達は暮らしていた。
思いのほか住みやすかったので気に入っている。

「隼音ー、ご飯まだー??」
「まだ1分しか経ってねぇんだけど」

わたしの体内時計では既に1時間経過しているはずなんだけど。
つまり腹ペコというワケです。

「散歩行ってきてもいい??」
「はいはい、どうぞ行ってくださいー」

わたしは廃ビルの正面玄関からてくてくと出ていく。
出ていく間際に「三輪車とかに轢かれるなよ」と言われたので「轢かれるわけねーだろ▼※%&#」と言い返しておいた。
後に言葉じゃない言葉が混じってるのは無視。
わたしは廃ビルの真後ろにある倉庫の中に入っていった。
薄暗くて埃が舞っていて、蜘蛛の巣まで張ってある少し不気味な倉庫。
隼音がよく出入りしている倉庫。
いつもは入っちゃいけないと言われているけれど、興味があるので入ってみる。

「入るなって言われるほど入りたくなるんだよねー」

わたしが入った途端目に付いたのは深緑色の鞄だった。
傷だらけで埃まみれの、隼音が大事にしている鞄だった。
わたしが隼音に発見された時もこの鞄を肩に提げていた。


          #


『その鞄なぁに。傷だらけだし、新しいのに買えないの??あ、糸解れた』
『大切な人から貰った大切な鞄だしな。あ、糸解れた』

そう言って愛しそうにその鞄を見つめる。

『コイビトの??』

わたしが茶化すと隼音はわたしの頭をぐしゃぐしゃと撫でてきた。
わたしが髪を整えようとしてもぐしゃぐしゃを繰り返してきた。

「お前にはまだ早ぇえよっ」


          #


そうやってずっとはぐらかし続けてきた。
だから今、こうして隼音に内緒で来ているのです。

「さあ、おーぷんっ」
「ばぁか」

後ろから声がして鞄から目を離した隙に、鞄を取られた。

「隼音っ?!ご飯はっ」
「出来ましたー、早く来い」

わたしは頬を膨らませぶーと唸った後、隼音がわたしを置いて、鞄を持って歩き出した。
その鞄の中からひらひらと、一枚の写真が零れ落ちる。
わたしは隼音が写真を落とした事に気付いてない事を確認してその写真を表に翻す。
其処には綺麗な女性と、少しばかり若い隼音と、それから男の子と、

「……わたし??」

隼音は振り返ってからわたしが持っている写真を見て目を見開く。
間違いない、間違えるはずも無い、わたしの家族だ。
それを、何で隼音が。
隼音はわたしから写真を取り上げておもむろに鞄に突っ込んだ。

「見なかったことにしろ」
「何で、何でこれを持ってるの?!」