ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 【第六話】黒蝶は眩しさに酔う @4 ( No.78 )
- 日時: 2011/01/05 09:35
- 名前: 氷兎 (ID: 8hgpVngW)
海の向こうの彼に手を伸ばすが、その行動も虚しくわたしは海に呑まれた。
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「あれ、久しぶりだね。どうしたのかな。何で居るのかな」
「分かんないっ、でも、会えて嬉しい気もする」
目の前に居るのは、雪のように真っ白な髪を三つ編みにして左に流している髪型で、瞳も同じ様に真っ白だ。
黒く短いワンピースを着ていて、黒い膝までのブーツを履いている。
わたしよりも少し高い背丈で、でもそれにしては細身で。
「そうだね。うちも嬉しい」
彼女は顔を綻ばせて少し照れながら言う。
「ルカ、君まだ生きてるんだ」
「失礼だね。生きてるよ」
苦笑しながらわたしに言う。
それから彼女は腰に差してある細剣[レイピア]を抜いてわたしの首に添える。
「でも、次会う時は敵同士だと思うよ」
「わたしもそう思う」
それから彼女は細剣を鞘に仕舞った。
彼女とわたしはお互いに何でも知り合っている間ながら、一度しか会った事がない。
それは、彼女が死んだと思っていたから。
わたしと彼女が出会ったその日に彼女が死んだと聞かされていたのだ。
「ルカは剣を使うのが上手だから」
「勝てないって??」
「ううん、勝つけどさ」
「えー、うちが勝つよ。うちが勝って、マナを倒しちゃう」
「違うよ、わたしはいりやだよ」
「そうなの。じゃあ、いりやを倒しちゃう」
そう笑いながら話した。
これが夢なのか、はたまた現実なのか。とんと見分けはつかないけど。
わたしは死んでないんだと認識する。
「ほら、早く起きて」
「わたし、起きてるよ」
「現実で起きてよ」
本当に彼女は笑うのが上手だな、と思う。
彼女が泣いている所や、怒っている所は見た事がない。
ああ、いつか言ってたな。
——うちには喜怒哀楽の「怒」と「哀」がない。
って。
「じゃあ、またね」「絶対だよ」「うん、絶対」
わたし達は指切りをした。
「嘘ついたらどうする??」
わたしが聞くと彼女は暫く悩んで、
「うーん……殺しちゃうとか」
と、笑顔で答えた。わたしはその答えに、
「それじゃー守らないかもよ??わたしだったら逃げるもん」
と、答えた。
二人で考え込んで出た結論が、
「やっぱ、そーゆーのいらなーいっ。ゼッコーでいいじゃんっ」
「分かった。ゼッコーね」
となった。
彼女は「さてと、」とわたしの肩をポンポンと二回叩いて、
「隼音だったかな。あの人が待ってるから、行ってあげなよ」
わたしは隼音と聞いた瞬間、むっと眉根を寄せてそっぽを向いた。
それから彼女はわたしの頬を持って自分のほうに向けた。
「ごめんなさいって謝るんだよ。ほら、行った行った」
そう言ってわたしの肩を後ろに押した。
後ろにはブラックホールのような穴が空いていて、わたしはその中に落ちる。
「じゃあね。ちゃんと謝んなよーっ」
そう言って彼女は手をブンブン振って別れを告げる。
わたしは穴の中で一粒、涙を零した。
これは、わたしの心の弱さが原因だ。
わたしの心が弱いから、ルカが来ちゃったんだ。わたしの意識の中に。
もう、一人にならないと約束しよう。誓おう。
わたしは意識の中で、決めた。
もう二度と、見つけた光を離さないと。
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