ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 孤塔の少女 オリキャラ募集中です ( No.4 )
- 日時: 2010/12/13 16:13
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
第一話「気まぐれな日常」
佐倉市、上森町。上森第二高校。
平和で明るくそして平凡な一日が学校のチャイムによって終わりを知らされた。
俺、岬川葵は特にする事が無く今日あった出来事を思い浮かべながら教科書類を鞄に仕舞う。
———今日は帰ってから何をするか……。
そんな事をぼんやりと考えていると、後ろから何かがぶつかってくる。
「あーおいっ! もう帰ろうぜー」
何か、こと佐山友弥は俺の肩を右手でトン、と押して笑いかけてきた。
ちなみに中学校からの友人で高校で同じクラスになった、腐れ縁だったりもする。
そして、そんな奴の笑みに特に苛立つような事は無く、俺は曖昧に返事をしてから教室を出た。
現在十二月。窓の閉まっている廊下でさえも寒さを感
じ、鞄の中に入っていた上着を着た。
同じく帰路に着いている生徒も、部活に行こうとしている生徒も皆防寒着を着用している。
友弥は寒さに身を震わせて、両手を交差させて両腕を掴んでいた。
「寒っ! あ、今日葵ん家でゲームやんねぇ?」
「んー……別に良いけど。何で今日?」
「今思いついたから」
あーはいそうですか。それでー?
と、そんなやりとりを繰り返しながら俺らは外へと着いた。
近くに居た先生に「さよーならー」と適当に挨拶をしてから帰路へと着く。
友弥はゲーム何やる? とか、今日こそはお前に勝つぜ! とか言って強く意気込んでいた。
自然にそんな強い意気込みに笑ってしまい、友弥と他愛の無い話をしつつゲラゲラと笑って帰っていた。
そして時折頬を掠める冷たい風に身を縮ませながら上着のポケットに手を入れる。
来週辺りには冬休み。
そう言えば、冬休み中は何をするか……。
そんな自分でも分かるくらい楽しい悩みさえ待っていた。
道の霜柱を踏み潰しながら今日あった出来事を友弥と話して、楽しい悩みも考えて、帰っていた。
……そう、楽しかった。
——————見、つけた……!
「……は?」
……こんな声を、聞くまでは。
普通に、本当に普通に道を歩いていた。そして俺の家と友弥の家の分かれる分かれ道へと着く。
そして今日やるゲームの話をしながら俺が左、友弥が右へと行こうとした瞬間、さっきの声がした。
その声は友弥にも聞こえたらしくお互いキョトンとしたまま辺りを見回す。
しかし、声は二度は聞こえなかった。
そして友弥がもう一度辺りを見回してから、俺を見て首を傾げる。
「何だったんだろうな……今の声」
「さぁ? もしかしたら、空耳じゃね?」
「……多分そうだよな。ま、とりあえずさっさと来るから待ってろよ!!」
そう言って、俺らは声の存在を無かった事にしてお互い別れた。
そして友弥が来るまでにゲーム機の準備と菓子の準備をする俺はドアを壊しそうな勢いで開ける。
驚いた風にこちらを見ている母親に「ただいま」と早口で言ってからさっさと部屋へと入った。
そしてその頃にはさっきの声の存在など、すっかり忘れていた。