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Re: 孤塔の少女 オリキャラ募集中です ( No.26 )
日時: 2010/12/13 16:38
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)

此処は何処なんだ?
と聞くと麻音と花音はお互い顔を見合わせ、キョトンとした表情になりながら答えた。

「此処? 此処は、良く分からないけど……皆、多分女の子に連れて来られたんだ……葵もかな?」
「あ、ちなみにあたしもなんだけどね」

麻音と花音がそう言いながら微笑むので、つられて俺も笑って頷いた。

やっぱりあの女に連れて来られたのか……。

そんな事を思いつつ話の続きを聞く。
と、同時に友弥が呻き声らしき声を上げながらむくりと起き上がる。

……何ともタイミングの悪い時に目覚めたものだ。

友弥は目の前に居る麻音と花音を見ながらキョトンとしていた。
そして俺同様に痛んでいたらしい頭を押さえながら辺りを見回し、俺を見る。
自分と同じ行動をしている友人にややおかしさを感じつつとりあえず説明をしておいた。

「此処は良く分からないけど……あの女に連れて来られたっぽい。あ、それとこの二人は伊集院麻音と早乙女花音。今此処の事について説明してもらってる」

と、此処まで一気に言って理解してもらえるか不安があったが友弥はあっさりと頷いてくれた。
友人の理解力の高さに感謝しつつ友弥は「俺は佐山友弥。宜しく」と二人に自己紹介をしている。
そして話が早速再開された。

「それで、少女の付き人なのか何なのか、サマエルって言う奴が居るの」
「そうそう。一応此処は勝手に出られるんだけど、出ると変な化け物が居て見つかると……」

花音の後に麻音が話し、そして話の語尾を濁しながら辺りを見回してそのまま真っ直ぐの方向を指差す。
そこを良く見ると暗闇に慣れた俺には一人の座り込んでいる人影が見えた。
誰かは知らないが、生きているのか死んでいるのかすら分からない状態なのは分かる。
青白い腕がだらりと床に垂れ、目は虚ろで焦点があっていない。そして一ミリたりとも動かない。
そんな様子の人間に俺と友弥は「うわっ!」と短い叫び声を漏らしたが、二人は慣れている様子だった。

「あんな風になるんだ」

要するに、廃人になると言う所だろうか。
それを平然と話す麻音を恐ろしく思いつつもその廃人を見てみた。
魂を抜かれたような呆然としているそれにまたも叫び声をあげそうになる。
正直、此処にいるだけでも恐ろしさに身体が震える気分だったが友弥が居たのでそれは無かった。
友人とは良いものだ、そんな事を思いつつ二人の話を聞いているとガシャン、と部屋の扉が開く音がする。


「愛沙、サマエルが来ましたよ」
「……知ってる。アンタら、自分の邪魔にならないようにしといてね」

と言うか此処は牢屋だったのか。

とか思っていると二人の人影が扉へと近づく音にピクリと反応する。
二人の内の一人はカウボーイが被っているような帽子を被り、短めの朱色の髪に灰色の目を持つ男。
丁寧な口調で、愛沙と言う少女を呼んでやや感情の読み取りにくい微笑みを浮かべながら扉へ近づく。
そして愛沙と呼ばれた藍色の肩にかけた髪に赤目の少女が静かに頷き、こちらを見た。
そんな様子の二人に何故か反論は出来ない俺と友弥。
そして慣れている様子の二人に一人の少年が近づいて来る。
容姿は金髪っぽい明るい茶髪のショートカットに何故か耳に生えている角に赤目。
先ほどの男とは違う、どちらかと言うと遊蓮に近い温かな微笑みを見せていた。


「そう言えば、君達はサマエルに合うの初めてだっけ? あ、俺は罪木獄。……動かない方が良い」


その言葉の意味は、すぐに分かったのだった。