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Re: 孤塔の少女 オリキャラ募集中です ( No.33 )
日時: 2010/12/14 07:03
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)

ガシャン……と言う音と共に、何者かが牢屋の中へと入って来る。
そいつは長い赤髪に、見た瞬間やや震え上がりそうな程鋭い黒目を持ち身長はかなり高く大体180cmと言ったところ。
手には何も持っていない筈なのに、物凄い威圧感でこの男自体が武器なのではないかと思う程。
自然と俺は動きが止まり、これが“サマエル”と言う奴なのだと察した。
そしてカウボーイを被った青年と愛沙がゆっくりとサマエルに近づいている。
サマエルはそんな二人が近づいて来るのを見かけると、ゆっくりと視線をずらす。

「……今日は例え戦ってとしてもお前らを逃がすなどと言う愚は犯さん」

……お前らを逃がす? と言うかこいつは一体何なんだ?

そんな俺の疑問をよそに青年と愛沙はそれを聞くなり何故か武器を下ろす。
サマエルには適わないと悟っているのか、何なのか。
いかにも強そうな二人の予想外な行動に俺は思わず「え?」と小さく声を漏らした。
それを聞いて焦る花音の顔とは裏腹に、サマエルは俺の方へと視線を移している。

「!! ……お前は」

そしてそう言うなり俺の方へと早歩きで近づいて来た。

……な、何だよ……!

目を恐怖に見開かせ、けれどそれでも何も居えず俺はその場に座り込む。
歯がガチガチと震え、何とも情け無い姿になっているだろう。
しかしそんな自分に苦笑する余裕すら無く、サマエルと言う存在に怯える事しか出来なかった。
そしてサマエルはこちらの目の前へとやって来るとじっと俺の顔を見つめる。
俺は何の抵抗も出来ず、ただただ震えているままだった。

「…………時、か……」

サマエルはそう言うと俺から視線をずらしてふぅ、と溜息を着く。
言葉の意味はいまいち良く分からなかったが、とりあえず震えは収まっていく。
花音と麻音も安堵した風に溜息を着いた。


……その矢先。


「ぐ、ごはっ……!!」

突然俺の首は強い力、つまりサマエルの両手で持ち上げられ、締め付けられていた。
突然やって来る息苦しさと恐怖に俺はまたも抵抗できず、されるがまま。

くそっ……俺がどうしたって、言うんだ……!!

歯をギリギリと食い縛り、必死で苦しさに耐える。
一方のサマエルは涼しい顔をして俺の首を手に筋が出来るほど絞めていた。
他の奴は突然あった出来事に戸惑ったり、相手がサマエルと言う事あってか誰も動かない。
無理も無い。俺だって動けなかった。

「……お前は「   」……か……?」

突然サマエルが眉一つ動かさず聞いてきた。

「   」……? 

突然言われても意味の分からない言葉と首絞めのせいで消えてゆく理性が情報をよこしてこない。
俺の返答が来ないとサマエルは呆れた風に、もっと強く俺の首を絞めてくる。
これほどにまでない苦しみが俺を襲ってきた。

「か、は……ぐ、……ほ、ぁっ……!!」

死ぬ。
終わる。
殺される。
何も知らない内に。
たった一人だけ。
死ぬ。

脳内が勝手に死のサイクルを創り上げる。
けれど、もう何も考えられない。


……終わる……のか?






「あんたさ、何してんの?」





声が、聞こえた。