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Re: 孤塔の少女 オリキャラ募集中です ( No.35 )
日時: 2010/12/14 14:15
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)

「まず此処は皆ある少女の光に包まれてやって来た。それでさっきのサマエルって奴が時々来る時以外は自由に出られる。ただし化け物が居て出ると廃人になるのは……知ってるか?」

簡潔に用件をまとめた風に梓は話し出した。
そして俺と友弥に視線は注がれて俺らは慌てて頷く。すると梓は話を続けた。

「それで此処からが重要なんだけど……此処の時は止まっているんだ。生き物は自由に動くが、外の時とは全く繋がっていないからこの塔から出るだけだと元の俺らの知っている場所には来られない」

どうやら梓は外へと出た事のあるらしい。やけに詳しい説明に感心しつつ俺らはまた頷く。
ふと横を見ると麻音が感心した風にじっと聞き入っている。麻音も知らなかったらしい。
ただし、横に居る花音は知っているとでも言う風に聞き流していたけれど。

「それで此処からどう出るかと言うと……この塔に居る少女、エーリスを救い出す事さ」
「エーリス……?」

ふと俺は首を傾げながら疑問風に語尾を上げ、呟く。
先ほども言われていた言葉に何故かは知らないが俺らを連れてきた少女の姿を思い浮かべた。

……ある少女とはエーリスの事だろうか。

そんな俺の疑問に答えるかのように梓は頷いて離し始めた。

「多分あんたらもだと思うけど、此処に連れて来た少女の事さ。そんで、塔の頂上にいるらしいエーリスを救い出せば俺らは出られる……けど」
「…………けど?」

今度は麻音は先ほどの俺同様の反応をしつつ聞いていた。
飲み込みが早いなぁ、と梓は言いながらにこりと微笑んで説明する。

……彼の説明が上手いからじゃないの? 

と言いたくなったが特に言うタイミングでは無かったので止めておいた。

「さっき外に居る化け物に見つかると廃人になるって言ったろ? 実は他にも化け物が塔のそこら中に居て廃人で済まされるレベルじゃない化け物がいるんだ」

……廃人で済まされるレベルでは無い化け物。

俺は思わず生唾をゴクリと飲み、梓をじっと見つめた。
廃人で済まされないと言う事は死んでしまうと言うレベルもあるのだろう。
そんな様子の俺に梓は「大丈夫?」と苦笑していたので、とりあえず頷いておく。

「ま、今まで俺らも色々出たりしたけど一応は大丈夫だった……それで俺らの時で言えば、“明日”にまたこの牢屋を出る予定だ」
「あ、明日……?」
「うん。準備は俺の方でしとくから、それに一刻も早くここから出たいだろ?」

……突然。しかも明日!?

あっけに取られポカンと口を開けた俺と友弥を梓は面白そうに見つめている。
確かに早く戻りたい。こんな所に居れば本当に頭が狂いだしそうだ。

……けれど、武器とかそう言うのは必要なのだろう。まぁ、梓が用意してくれそうだけど。

前の平和な日常を思い出し、ふと胸が痛んだが気付かないフリをした。
これからは甘えなど無い時がやって来るかもしれない。





そんな気がしたから。