ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 忘却の金曜日 ( No.3 )
日時: 2010/12/14 17:57
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)

  第一話 小鳥が一羽、飛んで行く。

「ふわぁぁぁ〜……」


十二月五日。土曜日。
僕は昨日の皆の哀しそうな顔を思い出しながら、欠伸をしました。
目に出て来た涙は欠伸の涙と哀しさの涙が混ざっている気がします。
次こそは記憶を失わないよう、頑張りたいです。

……あ、お外に小鳥が居ます。
黄色の小鳥で、高くて綺麗な鳴き声で歌っていました。
あんまりに高い鳴き声なので泣き声みたいです。

僕がそんな事をぼんやりと考えていたら病室のドアがバーン! と凄い大きな音を立てました。
何だろうと思っていたら誰かが入ってきます。

良く見れば、昨日僕が泣かせてしまったお友達です。優しい人達で、お見舞いに来てくれました。


「あ、おっはよ♪ 今日は私達の事覚えてるかな?」


そう言ってにこにこ笑いながら僕を見たのは、真白さんと言うお友達。
でも、僕は昨日忘れてしまったので真白さんの事は名前以外良く知りません。


「お前いきなり何言ってんの! あ、おはよー」


真白さんの肩をバシーンと叩きながら葉月さんと言うお友達が笑ってくれました。
葉月さんの事も良く知りませんが、昨日は泣いていたので今日は笑顔になってくれて嬉しかったです。

二人とも、昨日は泣いていたのに今日は笑顔でちょっと驚いたけどやっぱり嬉しかったです。
それと、僕が変な事を言ったから泣いてしまったんだなと思いました。

お外はいつの間にか眩しいくらい太陽が光っていてとても温かくなっています。
真白さんと葉月さんは着ていた上着を一枚脱いでいました。
僕は患者用の服を着ていたので脱げません。

そして真白さんと葉月さんが学校であった出来事を話してくれました。聞いていてとても楽しかったです。
僕も前に学校に行っていたらしいですけど、今はずっと病院に居ます。

これは昨日真白さんが教えてくれたことなので、何でかは分かりません。
そう言えば首に包帯が巻いてあるので、これのせいかもしれません。

僕達が色々お話をしていると、ドアが今度は静かに開いて男の人が入って来ました。
でも、誰かは知りません。忘れてしまった人なのでしょうか。



「おー……あ、今は初めましてか。俺は浪森涼也。お前の主治医」


そう言って涼也さんは僕の手を握って握手してくれました。
今は初めて、と言う事は前の僕は涼也さんの事を知っているみたいです。