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Re: 忘却の金曜日  ( No.109 )
日時: 2010/12/29 17:38
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)



「……涼也サン、今来て大丈夫でしたか?」
「あ、すいません。僕七瀬馨って言います」


重々しい状況を壊すかのように病室に二人の人影が入って来た。一人は白髪の混じった青髪の少年。もう一人は茶髪で眼鏡をかけている少年。
そして茶髪の少年は七瀬馨、と言うらしい。涼也はその二人を見るなりやや救われた風な表情をした。


「あぁ、今来て欲しかった所だな……」
「あの、夕君大丈夫ですか?」


馨は病室を見回し、割れた硝子と今しがたベッドで寝ている夕を交互に見つめて涼也に問う。
涼也は肯定も否定もせず、重い溜息と共に説明を始めた。


「今ちょっと錯乱しててな……麻酔で眠ってるところだ」
「!? さ、錯乱って……もう、なんですか!?」


涼也は深く頷く。馨は顔を蒼白にして夕の元へと走って近づく。一方で青髪の少年は涼也を静かに見つめてから話し始める。


「そいつ……魅代夕だよな?」
「あぁ。お前が夕と会うのは初めてだよな? 宗弥」


宗弥と呼ばれた少年は深く頷いて夕の元へと近づいた。そして涼也は扉の近くにいる小春の元へと歩き出す。
小春は特に怯えている訳でも無く、動揺はしていない。しかし資料を持つ手がかなり強張っている。
涼也はそれに敢えて気付かないフリをして近づいた。


「悪い……資料、貰えないか」
「別に良いけど……ショック死とかしないでよ?」


小春は訝しげに涼也を見つめ、資料を手渡す。涼也は苦笑しながらそれを受け取り、静かに病室から去った。
小春も涼也と一緒に病室から出て、去り際に夕を静かに見つめていた。