ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 忘却の金曜日 参照400突破しました!! ( No.153 )
- 日時: 2011/01/07 21:23
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
「っ……お前、は……」
「な、浪森先生…………?」
浪森先生は僕の胸倉を掴んでいて、でも何故かその手が震えていました。
僕は何が何なのか全く分からなくて呆然としていたと思います。馨さんも宗弥さんも同じみたいです。
でも、浪森先生だけが状況を知ってしまったかのようで、ますます訳が分からなくなりました。
そして浪森先生は僕をじっと見てから……顔をうつむかせて、
泣いていました。
「何、で……お前、……んだよっ……」
「先生……どうしたんですか? 僕…………」
浪森先生がボロボロと涙を零していて、僕は本当に訳が分からなくなったので浪森先生に聞いてみました。
すると、浪森先生は2、3枚の紙を白衣のポケットから僕に渡しました。
「薬中、夫……身内虐殺事件……?」
その資料の一枚目の紙の一番上に大きくそう書かれていました。
何かの事件かな、と僕は思ってその紙を見た瞬間、僕は物凄く驚いてしまいました。
“麻薬中毒の魅代隼人(47)が妻の魅代加奈(45)を虐殺。その後飛び降り自殺をした。
尚、息子の魅代夕(16)は二人から虐待を受けており、事件の直前も殴る蹴るなどの暴行を加えられていたらしい。
事件後はショックからか錯乱し病院へ搬送。現在療養中”
…………麻薬中毒? 飛び降り自殺? 虐殺? 虐待? 暴行? 錯乱?
頭の中に一気に単語が入って来て、頭が破裂してしまうんじゃないかと思いました。
でも、びっくりするくらいに全く見に覚えの無い事であまり親近感を感じません。
反応に困って僕が浪森先生を見ると、波森先生は涙を拭ってから頷きました。
「お前の記憶を失う前、あった事件だ。……悪いな、お前が全く覚えてないって分かって無性に悔しかったんだ」
「…………いいえ。僕も、先生に迷惑かけちゃってごめんなさい」
僕が頭を下げて謝ると浪森先生は首を振って僕の頭を撫でてくれました。
見に覚えの無い、大事件。でももしかしたら近々思いだせるのかもしれません。
「……夕君は記憶と両親を失ったんですね……」
馨さんがそう言って、浪森先生はまた頷いてから僕に「寝とけ」と言って病室を出て行きました。