ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 忘却の金曜日 参照400突破しました!! ( No.158 )
- 日時: 2011/01/07 22:01
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
第四話「カウントダウン or タイムリミット」
「だ、大丈夫だったか夕? 俺……」
「はいはい落ち着けって蒼さん」
十二月八日。火曜日。午前十時。
今日は蒼さんと雅さんが来てくれました。
今日は蒼さんは学校が休みで、雅さんは暇だったからと来てくださったそうです。
「はい……蒼さんも雅さんも心配して下さってありがとうございます」
「はは、こちらこそ蒼を焦らせてくれてありがとうございます」
「ちょ、何言ってるんだよ雅!」
普段真白さんと葉月さんがやっているみたいな……えっと……ボケツッコミ?を今日は雅さんと蒼さんがやっててちょっと面白いです。
それで僕が思わず笑うと蒼さんが顔を真っ赤にして焦るので、ますます笑ってしまいました。
「そう言えば、今日は診察無いのか?」
「あ、はい……浪森先生がちょっと出張するらしいんです」
僕がそう言うと二人とも何故かビックリするほど納得したので僕はちょっと不審に思いました。
「あの……」
実は今日、僕はとある事を蒼さんと雅さんに相談したかったんです。
それで僕が思い切って言おうとすると、二人とも同時にこっちを見てきました。
「「どうした?」」
「えと、実は…………怖いんです」
僕がそう言うと、二人ともキョトンとした顔をしてお互いの顔を見てからまた僕を見ました。
僕は自分が今何が怖いのか言えば良いかな、と思って話を始めました。
……こんな事言って、大丈夫かな。
自然と腕が震えてきます。
「金曜日になって……記憶が戻ったら、
また皆を忘れちゃって、皆を傷つけちゃうんじゃないかって……」
僕が其処まで言うと、肩にポン、と手を置かれました。
その手は蒼さんの手で蒼さんは僕にニッコリと笑いながら話をしてくれました。
「大丈夫だよ、夕」
「…………え?」
顔を上げると、二人とも物凄く優しく微笑んでいてちょっと安心しました。
そして雅さんが話を続けてくれます。
「夕が俺らを忘れても、俺が夕を忘れないから……傷つかないよ」
「おい雅、さり気なく俺を抜くな。俺も夕の事忘れるわけ無いだろ?」
そう言って、蒼さんはまたニッコリと微笑んで僕の頭を撫でてくれました。
昨日の浪森先生みたいな暖かい手で、改めて心が温まった気分がします。
「……何回夕が俺を忘れたって、絶対に傷つかないからな」
「そうそう。いじれるしな(笑」
蒼さんが微笑んで、雅さんがちょっと怪しく笑って……また場の雰囲気が温まりました。
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暫くするといつの間にか一時になって、二人とも帰る時間になりました。
「蒼さんと雅さん……ありがとうございました」
「いやいや、これくらい平気だよ」
「そうそう。また来るな」
そう言ってもう一回笑ってから、ドアをそっと開けて、手を振ってからまたそっとドアを閉めました。
僕は今日、二人が言ってくれた言葉を思い出しながらちょっと笑ってしまいました。
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「あの台詞、何回聞いたかな……」
「蒼、泣くなよ」
病院の廊下。蒼と雅は二人横に並んで歩いていた。
そして蒼は俯きながら雅に向かって呟く。
……あの笑顔も、何回見ただろうな。
泣くな、と言う雅の言葉のお陰で蒼は泣かなかったが彼はそれ以上に辛い物がこみ上げてくるのを感じた。