ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 忘却の金曜日 参照500突破しました!! ( No.174 )
- 日時: 2011/01/08 10:07
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
- 参照: http://ameblo.jp/tiakizero/image-10758909877-10964047708.html
「夕……」
涼也は夕の心音を聴診器で確認してから、安堵した風な溜息を着く。
……かと思えばまた深刻そうな症状をして自分の右手で顔を覆った。
(記憶が戻ったと真白は言っていた……じゃあ、その反動か? 何なんだって言うんだよ、クソッ……)
心でそう呟きながら舌打ちし、用意していた氷枕で夕の頭を冷やす。
夕は現在高熱を出していて、状態的にも危険になっている。
昨日の錯乱状態は怪我などの危険があるが、今日の熱は命に危険があるのだ。
(記憶が戻った時のリスクは……やっぱり考えておくべきだったのか)
医者でありながら何も出来ない自分に対しもどかしく思いつつ、頭を抱えた。
……先ほどまで笑顔で居た夕は何処へ行ったのか、宛の無い疑問ばかりが頭に浮かんでいるようだ。
そして涼也は今まであった夕との出来事を思い出す。
(真白が来た途端錯乱が収まって……気持ち悪いくらいに純粋だった。……あのままで居れば良かったのか?)
そんな考えが浮かび、涼也は一人でに首を振る。
(いや……でもこの事実は、伝えなければいけなかった……。アイツが一人でそれを知れば、耐えられなかったかもしれない……)
こんなのは自分のエゴだ。そう心の中の自分が呟く。
それは涼也にとって正論な気もして、異論な気もした。
涼也はギリッ、と歯を食い縛りただただ夕の意識が回復するのを待つ。
そしてベッド付近にあった椅子に座ると、足元に三枚の紙があった。
「何だ、これ……!?」
それは夕に見せた夕に関する事件と…………カルテ。
それは当時自分の書いた夕の症状のカルテで清瀬が仕舞っておいたのだろう。
そして夕は間違いなく、昨日そのカルテを見たのだ。
(馬鹿か、俺は……!!)
涼也はカルテを力の限り、床に向かって投げた。
このカルテは絶対に夕に見せてはいけないと自分の中で決めていたのだ。
(それなのに……あっさりと見せやがって……!!)
自責の念に囚われ、涼也は顔をうつむかせる。
これを見た時、夕はどんな事を思ったのだろう。
哀しみ、苦しみ、恐怖……色々あっただろう。間違いない。
「……ん?」
ふと三枚目の紙が裏に捲れているのを発見して、涼也はそれを見た。
と、同時に静止する。
(手紙……?)