ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 忘却の金曜日 参照500突破しました!! ( No.177 )
- 日時: 2011/01/08 11:05
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
病室へ入ると、夕がゼェゼェと苦しそうに呼吸をしながら寝ていた。
まだ危険な状態らしく、私達はそっと近づいてから夕の顔を覗き込む。
「……夕」
返事は来ない。
私は涙を堪えながら静かに椅子に座った。
「この手紙を見てくれ」
すると浪森先生が突然一枚の紙を私達に差し出す。何かと思い私がそれを見るとそれは夕の文字。
三人で食い入るように手紙を見始める。その手紙は遺書と呼べるのか呼べないのか分からない手紙だった。
———この手紙を読んでいるとき、僕の記憶は戻っているのでしょう
か。
皆さんの事を、忘れたりしていないと信じています。
そして皆さんと一緒に笑顔で話す事が出来ると信じています。
……でも、もし、そうでなかったら。
お願いです。泣かないでください。
そして沢山の物を見て、長く生きていてください。
出来れば金曜日には僕の事を思い出してください。
そして笑顔で生きていてください。
僕と仲良くして下さった真白さん。
真白さんはいっつも明るくて、僕はいつも救われていました。
面白くて優しい葉月さん。
真白さんと話す時は凄く面白くて、僕に優しくしてくれて……凄く嬉しかったです。
優しくて兄みたいに思える蒼さん。
穏やかで火曜日に「大丈夫」だと言って下さってとても安心しました。
温かくて皆に優しい浪森先生。
いつも迷惑をかけて御免なさい。僕の為に泣いてくださって、温かくて……感謝し切れません。
病室に響く笑い声も、時々切なくなる時も、いつも皆さんが居てくれたお陰で僕は笑顔で居られました。
一言だけ言わせてください。
ありがとうございます。
魅代夕
「夕……っ! 夕!!!」
手紙を読み終え、私は半ば叫ぶ風にして夕の顔を再度覗き込む。
……何で? と疑問が次々に頭に浮かび、気付けば声が出ていた。
「まだ、死なないでよ! ……言ったじゃん、あの時……。護るって……」
「真白、アンタ……」
「夕の事護るって誓わせといて、何で死ぬ事に納得してるの!? ……そりゃあ、夕がどれだけ辛いか私には想像つかないと思うよ。……でも…………無いよ、そんなの……」
言いたい事がボロボロと出てきて変な文になったけれど、それでも気持ちは溢れ出してくる。
そして終いには私は泣いていて、夕の顔に雫が落ちていた。
「泣か、な、いで……」
「!?」
気付けば、夕が目を覚ましていた。