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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 忘却の金曜日 参照500突破しました!! ( No.179 )
- 日時: 2011/01/08 12:32
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
「……?」
夕も、葉月も、蒼さんも、浪森先生も皆呆然としていた。
私は微笑みながら、夕に話した。
「あの日……夕、泣かなかったでしょ? いや、あの日だけじゃなくて私と葉月と三人で居る時もずっと泣かなかった。
本当は苦しかったでしょ? ……もう泣いて良いよ。
夕は独りじゃないから」
「っ…………」
夕はペタン、と床に座り込む。私も床に座り夕をじっと見つめた。
知ってるよ、夕がずっと苦しそうなのは。だけど、何も言えない自分が居た。
今しか言えない事だけど、もう夕は独りじゃないから。
皆沈黙したままだったけど、表情が優しくなるのを感じる。
そして夕は
「うわぁっ……あぁっ、ふっ、うぇぇっ……」
遂に、涙を零した。
今までの思いを全て流すように大粒の涙が両目から無数に溢れ、私に抱きつきながら泣いている。
私は何もせず、黙っていた。余計な事を言わない方が良いと感じたから。
「僕、っは……生きてて、良いん、です、かっ……?」
「勿論。ねぇ、葉月?」
「当たり前じゃん!」
葉月はにっこり笑って床に座る。
夕はその笑顔を見ると口角を少し上げて嬉し泣きをした。
そして蒼さんと浪森先生も床に座り、図らずも四人で四角を作っていた。
ボーン。ボーン。
「……? 十二時……」
「金曜日、か……」
ふと夕の方を見る。勿論そのままで記憶は失っていない。
私達は一斉に涙を流し始めた。
正真正銘の嬉し泣きだけど。
「夕……良く頑張ったね」
「っ……真白さんも、ありがとうございました……」
夕が満面の笑みでそう言って私に抱きつく。
私も満面の笑みで夕に抱きつき返した。
……ありがとう、夕。
君のお陰で私も何かを手に入れた気がします。
忘却の金曜日 完
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