ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 忘却の金曜日 オリキャラ募集中です ( No.21 )
日時: 2010/12/17 21:37
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)


「えっと……宜しくお願いします」

僕がそう言ってぺこりとお辞儀をすると、二人とも何故かおかしそうに笑いました。
何で笑ってるのかなぁ、と思って二人を見ていると、雅さんがふと僕に気付いて説明をしてくれました。


「いや……記憶を失う前のお前と今のお前が凄く違っててさぁ……」


……記憶を失う前の、僕……?

ふと何か覚えて無いかなと思って首を傾げながら必死に考えてみました。
けど、何も見えません。僕はちょっと残念だと思ったけれど頷いておきます。
多分、記憶を失う前の僕は今と凄い違う人間だったんでしょう。


「あ、そろそろ俺らも帰らないとな……」


ふと時計を見上げた蒼さんがかなり残念そうな顔をしながら椅子から立ち上がりました。
それにつられて雅さんも立ち上がり、僕に手を振ってくれてます。


「来てくれてありがとうございました」


僕は出て行く二人に真白さん達のような、何か寂しいものを感じました。
なので、これだけ言っておくと二人は真白さん達のように明るくにっこりと微笑んでくれました。
そして扉を静かに閉めて、また僕の元へと静寂が訪れてきます。

カチ、カチ、カチ、カチ、カチ…………。

さっきはこの時計の秒針の音を聞いて蒼さん達が来たけれど流石にもう誰も来ませんでした。
僕は本当に暇になって、窓の外を見てみる事にしました。
お外には小鳥がいました。泣いてるみたいな高い声はしなかったけれど、同じ小鳥だと思います。
でも、木の枝の先に立っている小鳥は朝と違って何処か死んでいるような感じがしました。


(……死んで無いのに…………)

僕は何でこんな事を考えているんでしょうか。

僕は自分に対して首を横に振りながら、でもお外を見続けていました。
鳥が鳴く事も無く、ただただ見ているだけだけど何故か暇にはなりません。

カァーカァー……。

ふと小鳥の鳴き声とはうって変わった何処か汚いような声がしました。
正体は鴉。真っ黒な羽をバサバサと揺らしながら大きな声で鳴いてます。


(……あれ、何か狙ってる……?)


僕がそんな事をぼんやりと考えていたら、鴉は、あの小鳥を嘴で掴んでしまいました。
突然の光景に僕はビックリしてベッドから落っこちそうになってしまいます。
慌ててベッドの上の方へと戻りました。




——————バシン!!




何故か突然に何かを叩くような、乾いた音が、頭に響き渡りました。
その途端に僕の頭の中がぐわんぐわんと音が鳴っているかのように喚いている気がします。
突然視界がぼやけて、眩暈がして…………




キ  モ  チ  ワ  ル  イ  …  …





「っあ……ふ、ごぁ……」


胸の中で何かが動き回ってるような気持ち悪さがして、僕は思わず身をよじりました。
それに耐え続けて、どれくらい経ったでしょうか。突然スッと苦しみが消えてゆきます。

……良かった。直った。

僕は安心する風に溜息をついてから気持ち悪さからきた目の涙を拭き取りました。





小鳥の姿は、もう見えません。


第一話 終