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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 忘却の金曜日 参照100突破しました ( No.34 )
- 日時: 2010/12/19 09:52
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
第二話「思い出」
病院の外。
其処には緑色の瞳を持つ少女と、白衣を着た男が居た。
「……じゃあ金曜日の周期から抜け出せないって言うの?」
少女の緑色の瞳が白衣を着た長身の男—涼也を捉える。
涼也はそれに動揺することも無く、言葉の問いに静かに頷いた。
「芽衣の言う通りさ。過去が分かりやしない」
芽衣、と呼ばれた少女は腕を組みながら溜息をついた。
そして耳に着用しているヘッドホンを弄りながらやる気の無さそうなけだるい声で答える。
「小春さんに調べてもらってるんでしょ? 夕って奴の過去」
「あぁ……あまりおぞましいモンだと面倒だけどな」
涼也はふぅ、と溜息を吐いてから白衣のポケットから煙草を取り出しライターで火をつける。
そしてそれを口に含み、灰色の煙を辺りに振りまいた。
その臭いを特に気にすることなく、芽衣は話を続ける。
「良く知らないけど……夕って奴、とんでもない過去持ってる気、するけどね」
「ははは。だとしたら俺やる気無くしちまうぜ」
涼也は無表情まま笑い声だけあげる。いかにもやる気の無いオーラを纏っているようにも見えた。
しかし芽衣はそんな涼也の様子は特に気にせず、適当に返事をしてから病院前にあったバイクへと座る。
何故かヘルメットが無い。どうやらヘルメット無しでバイクに乗っていたらしい。
「んじゃ。記憶探し、頑張んなよ」
芽衣はそう言いバイク独特の駆動音を鳴らしながら去って行った。
残された涼也は一人溜息をつき、煙草を地面に落としてから踏みつけていた。
そして頭をグシャグシャと崩すように撫でながら無表情のまま病院の中へと戻る。
「記憶探し、ねぇ…………」
そう言ってまた面倒臭そうに溜息をついたのだった。
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