ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 忘却の金曜日 ( No.56 )
- 日時: 2010/12/23 15:20
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
それからはね、凄い楽しかった。無愛想な夕とツッコミ役の葉月と変人な私の三人で凄い遊びまくってたんだよ。
春には花見も行ったし、中間テストは三人で勉強した。雨の日は部屋の中で色々話したし、体育祭とかも色々やってた。
でもね、それが忘れもしない初めての三人での夏休みの日に崩れたんだ。
「あれぇー夕遅いね」
「……いつもなら五分前に来てるのに」
夏休みに入って三日目。うだるような暑さの日、クーラーのかかった涼しい映画館で映画を見ようと私が言って今日が見に行く日だった。
私達の住んでる町は、学校から北に十分くらい歩いた所に映画館があるある意味便利な街だったんだよ。
それで映画館の前に午後一時半集合って事だったんだけど……いつも五分前に来る筈の夕は来なかった。
映画が始まるのは一時四十五分だけど、今は四十分。映画を見に行く人も走りながら映画館へと入っている時間帯。
それでも夕は来なかった。電話すらかけてくれなかった。しかも携帯をかけても留守。
そんな夕を珍しく思いながら私と葉月は夕を待っていたんだ。
「先、行く?」
「んー……もうちょい待とう」
時計を見て焦る葉月を宥めつつ、私達は待ち続けた。さんさんと輝く太陽がまるで悪事を働いているかのような錯覚に襲われる。
気付けば映画館前にあった時計の針が一時四十三分を示していた。
「行こっか……」
「そだね……」
ちょっと気の毒に思えたけど、夕は夕なりに都合があったのかもしれない。私達は溜息をついて映画館へと向かう。
その時。
RRRR……。
何の変哲も無い私の携帯の着信音が響き、私は光速のような速さで携帯を手に取り、発信源を確認する。
“魅代 夕”
間違いなく、夕。私は急いでその電話に出た。
「もしもし? 夕、どした……「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ゆ、許し……許してっ……!! あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
聞こえたのは、夕らしき叫び声と、何かを殴る音。
……何があったの!!?
「夕!? ねぇ、どしたの!!? 夕? 夕!!」
ツー……ツー……ツー……。
其処で着信音が途絶える。私は葉月の方を見た。葉月も携帯から聞こえる夕の声に異常を感じていたらしい。
私達は頷きあい、映画の事なんてすっかり忘れて、夕の家に向かっていた。