ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 忘却の金曜日  ( No.57 )
日時: 2010/12/23 15:37
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)

走る。走る。走る。

あまり運動の得意で無い私は、この日ばかりは息切れも足がもつれる事も無かった。
そして学校を過ぎ、学校の前の道を左に曲がり、その先にある団地を右に曲がり、そしてまた左に曲がり……夕の家へ着いた。
実は今まで夕の家に行った事は一度も無く、この日夕の家を見るのは最初で————————————最後。


オンボロアパートみたいな所々欠けていて、でも二階建てでそこそこ大きい夕の家。
周りには通行人すら居なくて、そしてさっきの電話で聞こえた夕の叫び声が嘘みたいに家は静かだった。
一応開くかと思って確かめてみると、何故か鍵が掛かっていなくて、あっさりと開く。


「……」
「…………」


無言になる私達。だけど、夕の叫び声が後押しとなり私たちは家の中へと入ることにした。
一階には見たところ誰も居なくて、だけど部屋中の硝子と言う硝子が我まくってて異様に恐ろしい光景だった。
誰か居ないかと思って怖がりながら部屋中を回ったけれど、何も、誰も居ない。


「さっきの電話、演技だったりして、ね……」
「お前、何言ってんの……」


いつも通りのボケツッコミだけど、笑いは出て来ない。私達は恐る恐る二階へと足を進める。
二階の階段にも所々硝子の破片が落ちていて気味が悪かった。











けど。








そんなのどうだって良かった。









「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
「………………、っ…………!!!?」



階段へ上がり、先に葉月が上にあったある部屋へと足を踏み入れた瞬間、物凄い悲鳴を上げた。
夕が、床一面と言って良いほどの赤い血の真ん中で、倒れていたから。




「きゅ、救急車! ……それと……警察?」


声が震えつつも、一応葉月の手前何とかへ平静を装う。けれど足が情けないくらいにガクガク震えていた。
夕が今、どうしてこうなっているのか、何一つ、分からない。



携帯で救急車を呼ぶ時も、救急車が来てガタガタと震えている葉月と一緒に救急車に乗った時も……良く覚えていなかった。