ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 忘却の金曜日 ( No.70 )
- 日時: 2010/12/27 19:59
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
病院に着いたら、夕が運べるベッドに下ろされて気迫迫る医師———浪森先生が急いで夕の様子を見て、それから急いで止血をしていた。
幸い私と葉月は血が苦手ではなくて、その光景をそのまま見ていられた。そして、その血が夕のもので無いとも知る。
そう、夕の身体からは出血していなかったんだ。でも、誰の血かは分からない。少なくとも死体は見ていない。
誰の血なのか、そんな事を考えている私達の元に、ある人がやって来た。
「夕! ……夕っっっ!!」
「蒼、ちょっと待って!」
「落ち着けよ!!」
遠峰蒼さんと、彩ちゃんと、大倉雅さん。三人とも夕の幼馴染だったり、知り合いだったり……私達とも何かと面識があった。
三人ともビックリしていて、特に蒼さんなんて夕を見るなり絶叫と言わんばかりの叫び声を上げて夕の元へと駆け寄っていた。
「う、あ……?」
その叫び声に気付いたのか、夕が静かに目を覚ます。やっぱりあの血は夕から流れている血じゃ無かったか、とホッとしていた。
そして一応安心させる為に私と葉月が急いで夕の元へと近寄る。
けど、夕の反応が色んな意味で予想外だった。
「あ……あ、あ、ああ、あああああ、あああああああああ、あ……嫌だああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
「夕? え、えっと……どうしたの?」
「来るな来るな来るな来るな来るな来るな嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、や、だっ……! もう嫌だ!! 嫌だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
ドン、と夕は私を突き飛ばしてベッドから跳ね起きた。その当時の私は何があったのか分からなくてただただ呆然としていた。
でも、刻銘に覚えているのは夕の表情だった。目が見開いて、今にも泣きそうで、ついでに呼吸も荒くて……いつもの夕とはとにかく違う。
跳ね起きて、そして病院から逃げ出そうとする夕を浪森先生が抑えて麻酔を打って眠らせた。
次の日は、金曜日で、夕は今までの事を全部忘れていたんだ。