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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: この糸が千切れるまで ( No.6 )
- 日時: 2010/12/19 10:16
- 名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)
第一話「兄=蜘蛛?」
来ない。来ない。来ない。来ない。
あれだけ待ってるのに、何で来ないの?
あの日からずっとずっとずぅっと待ってるのに……。
「どうして帰って来ないの……?」
部屋を、台所を、風呂場を、教室を、図書室を、保健室を探したのに何処にもいない。
どうして居なくなっちゃったの? 私が嫌いになっちゃったの?
「ねぇ、お兄ちゃん……」
帰って来てよ。
帰って来ないと、私、死にたくなるんだ。
だってお兄ちゃんが存在しなければ
私の存在する意味なんか、無いもん。
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「暇……過ぎる」
糸を人間の首に巻きつけたくなるほど、暇すぎる。
……ってそんな暇じゃないけど。
首に巻きついてきやがる蜘蛛を追い払ったりするから、暇じゃない。はず。
………………やっぱ暇かも。
「妖怪にやる事なんざねーもんな」
そう、妖怪は暇な生き物なのだ。
人間の居る世界に行ってみたり他の妖怪と戦ったりする以外、何もすることが無い。
暇暇暇暇暇。頭にこの一文字が浮かんで離れない。
……ん? 人間の世界……。
「人間界でも行けば良いのか」
自分で言った言葉に感激しながら俺は立ち上がる。
首にまた巻きついてきた蜘蛛を投げ捨てて、伸ばしたり戻したりしてた蜘蛛の糸を切り捨てておいた。
人間界は面白い。娯楽も仕事も何でもある。
帰りたい時に帰れば良いし。
「さて、と……」
俺は暫くのろのろと歩いてから、目の前にある馬鹿でかい鏡の前に立つ。
この鏡をすり抜けて人間界へと行くのだ。
って、事で俺は特に走りもせず普通に歩いてその鏡を通り抜けた。
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想いと糸が絡み合う。
果たして生まれるのは何か。
幸は不幸かあるいは何か。
まだ、誰も、知らない。
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