ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: この糸が千切れるまで  ( No.13 )
日時: 2010/12/19 13:53
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)


糸が静かに垂れてきた。
その糸は何を求めるのでしょうか。


————————————————————————


「人ごみってこう言うのを言うのか」


人ごみと言う言葉の意味を深く理解しながら俺はやって来た街を歩いていた。
空は汚い……じゃなくて、灰色。曇り空。
やって来たは良いとして、何をしようか悩む。
暇が漠然としすぎてて何が暇なのか分からなくなってきた。とりま保留……何ちゃって。


「何処に行こーかーなー」


何て馬鹿っぽい喋り方をしながら街をさらに歩いてゆく。
すると見えてきたのは木々と川。人間界ならではの自然の光景。
何てこったい。これじゃあまるで休日のお爺さん状態じゃないか。

……とか、思いつつ川辺に腰掛けてみた。うん、やっぱ休日の(以下略)状態になってる。


「眠っみぃ…………」


人間界に降りてきて、突然眠気が襲ってくる。
とりあえず眠気に任せて目を閉じてみよう。
瞼を閉じれば、真っ暗な世界。


何も見えない。
色が分からない。


あれ、怖い。
何てこったい。怖すぎる。


色が無い。物体が無い。
暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗いくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいクライクライクライクライクライクライクライ!!!!


「……っ、気持ち悪……」


急いで目を開けて辺りを見回す。
川、木、時々人。緑、茶色。色も人も見える。
あぁびっくりした。怖かった怖かった。寝てもないのに悪夢を見た気分がする。汗掻いてるし。
結果的に寝たらヤバくなりそうなので、黙って座る事にした。
詩人風、とかそう言うのには一切見えない(はず)。


「…………何か面白い奴いねーかな」


やる事が無くなったので人間観察でもしてみる事にした。ただし、面白い変な奴限定で。
でも今は人おろか動物さえ居ないのでこの川辺から去る事にした。
立ち上がって、首筋にベットリと着いた汗を拭いて、ちょっと伸びもしてみる。


「……お兄ちゃん?」
「はい?」


何か後ろからいきなりそう言われて俺は思わず後ろを振り向く。
貴方誰ですか? と言う以前に何かビックリした。だって俺の後ろに居る少女らしき女


刃物持ってるんですもん。


何てこったい。俺何かピンチ? いや、何もして無いけど。
しかもお兄ちゃんてダレ? 俺立派じゃないけど妖怪ですよ?
刃物少女はにこにこと笑いながら俺に背後から抱きついている。


「やっぱりお兄ちゃんだ! 良かった!!」
「へ? いや俺お兄ちゃんじゃ……」
「………………違うの?」


ぎろり、と刃物少女は俺を睨んでくる。
うわぉ怖い。仮に兄と呼んでた奴にそんな表情をするか普通。
でも刃物が結構怖かったんでとりあえず首を横に振っておいた。


「だよね。良かった良かったーお兄ちゃん、早くお家帰ろう? ずっと待ってたんだから」
「んー……分かった」


とりあえず頷いておいて少女に着いて行く事にした。