ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: この糸が千切れるまで  ( No.24 )
日時: 2010/12/22 13:56
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)

 
想いが静かにぶつかってきた。
糸はそれを真っ向に受け、千切れの時を早まらせる。

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家へとやって来たは良いものの、見た瞬間背筋に悪寒が走った。
家中に溢れる何故か異様に俺に似ている人の写真が張られているんですよ。

何てこったい。

俺は溜息を着きながら刃物が怖かったせいもあってさっさと家の中へと入る。
俺(に似た人)。俺(に似た人)。俺(以下略)。俺。俺。俺……うわぁぉ、俺だらけ。
滲み出る苦笑を、少女は喜びの笑みと冠が違いしたらしく、にっこりと笑っていた。


「部屋の中、お兄ちゃんでいっぱいでしょ? 頑張ってやってみたんだよ」
「そうなんだ……お疲れさん」
「えへへー」


少女は屈託の無い笑みでにっこりと笑い、刃物を机へと置いた。どうやら信頼してくれたらしい。
俺はそれに安堵しつつ、改めて部屋を見てみる。うん、やっぱり俺(に以下略)だらけ。


「お兄ちゃんご飯食べる?」
「え?」
「もう六時だし、お兄ちゃん久しぶりに帰ってきたから、疲れてるでしょ?」


……何だこの新婚さん的なノリは。

そんな事を考えながら俺は……首を横に振った。
何故かと言うと、この家の構造上、台所がすぐ見れるのだが、はい見てビックリ。


得体の知れない黒色の物体がシンクに流出している。
恐らく、この少女の作ったものだろう。
だとしたらそれを食べるわけには行かないと言う話。


「俺が作るよ」
「……本当? 何かお兄ちゃん昔と変わって無いね」


昔? あぁ、この写真の人が居た時か。
曖昧に返事をしながらそんな事を考えて台所へと向かう。一応人間界に前行った時に料理経験がある。
少なくとも黒い得体の知れない物体を作れないほどの腕はわきまえている……はず。


「……んじゃ、料理するから」
「うん、待ってるね」


そう言ってから俺は写真の人が使っていたらしきシンプルな黒いエプロンを着て、料理を始める。

……と、その前にこの物体を片付けないとな。

俺はまた溜息をつきつつ、とりあえず得体の知れ無い物の片づけを始める事にした。