ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: この糸が千切れるまで  ( No.29 )
日時: 2010/12/23 11:39
名前: 涼原夏目 ◆YtLsChMNT. (ID: m26sMeyj)


……あれ? 咲? てか……えぇっ?

突然やって来た事に頭の周りに雛が回りそうな感じがする。いや、実際にはそんな事無いけど。
とりあえず状況を整理すればえっと雪芽の写真が見られて咲がもの凄いキレてコップが割れて俺が体調崩して、咲が倒れてる。
幸いな事に先ほどまで俺を襲っていた頭痛も消えていたのでとりあえず台所まで走り、戸棚のノブに掛かっていた青いタオルで汗を拭く。
一応はすっきりして、一応は冷静になって机に突っ伏すようにして倒れた咲に近づく。

咲は眠るように、と言うか静かな寝息すら立てて、気絶していた。突然ぶっ倒れた割には机があったおかげか傷一つ無い。

……今起きられても困るのでどうすれば良いものか。

そんな事をボーッと考えていたら、涼しい夜風が俺の首筋を掠めた。あぁ、涼しい
……って、え?
ドアはさっきまで鍵を閉めて開いてる筈が無い。風が吹いている筈も無い。
……あるぇ?


「あのー……無視してるの、わざと?」


いえいえ……ってうぇっ?


「いえ……って貴方は?」
「あ、忘れちゃった? ……私、木之元夏苗なんだけど……覚えてないかな? 悠」
「はぁ…………」


咲の横で、首だけ動かしてドアの方を見るとこの家の鍵らしき鍵を持っている女、木之元夏苗がにこにこと笑っている。

……覚えてるも何も知らねぇし。

そんな事を思いつつ、でも悠の知り合いだとは確信できたので曖昧に返事をしておいた。
すると夏苗は遠慮無く玄関へと上がり、履いていた白いスニーカーを脱いでペタペタと裸足でこちらへと歩いてくる。変人かよオイ。


「咲ちゃん、針に睡眠薬塗りこんでおいたから当分起きないよ……って事で話さない?」
「当分起きないって犯罪じゃないんですか」
「え? いや、生きれてば犯罪にならないでしょ?」


夏苗はキョトンとした顔で俺を見てくる。俺と夏苗では犯罪のレベルの受け止め方が実に違い過ぎる事が分かった。

……と言うか今気付いたけど吹き矢で咲を殺すつもりだったのかコイツ? 

でさ、何で悠はこう言う天然女(仮)と何か関係深いんだよ。
とか思いつつ、とりあえず話すことにだけは同意しておいた。

……とりあえず、咲を放置しておくのは悪いのでソファーにあった黒い
毛布をかけておいた。

そして台所へ行き、棚に入っていたインスタントコーヒーで熱々のコーヒーを作り、俺と夏苗の二人分のコーヒーを机に置く。
この狭い家には机が一つ、椅子は四つしか無いので俺は炒飯の置いていない椅子の方に座り、真理は俺の正面にある椅子に座った。


気分は保護者面談……何て事は無い。


「じゃあ、話すけど……」


あ、そう言えば何話すんだろう。
そんな事をボーッと考えていると、夏苗が勝手に話を始めた。




「咲ちゃんね、悠が居ない間に……物凄い壊れたんだ」



……はい? ……えぇ? 


飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。