ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 妖言神隠し ( No.8 )
- 日時: 2010/12/19 22:57
- 名前: 玖夙友 ◆LuGctVj/.U (ID: Omw3dN6g)
関係ない話…②
* * *
「……つか、新入部員遅くなくなくなくなくない?」
またかよ。
篠塚由丹生、権ノ門彩那は横目でその光景を捕らえつつ思った。
そして、ついに嫌気が差したか、女子部員が文句を言う。
「入枝アンタさぁ、ほんっとそれしか言えないわけ? チカちゃんいい加減怒っちゃうよ?」
「いいや、ただあまりにも遅過ぎると思ってね……。てか、一人称が自分の名字ってどうかと思うよ。なんて言うか、イタイ」
美萩は何気ない風を装って、ポケットから携帯電話を取り出して遊び始める。
話しかけるな、という意思表示だ。
「なぁによ偉そうに」
自称チカちゃんこと知花爪乃(ちかそうの)は目を細めた。
「大っ体、ユーくんが全部悪いんじゃない!」
「オレ!?」
ユーくんこと由丹生は自分に矛先が向いたのに驚き、そして当然呆れる。
よくあることと言えばそうだが、その割合が尋常でないのだ。「さっき挙手したのに先生に指されなかった——全部ユーくんのせいよ!」「オレ!?」「それに数学の授業が異様に長く感じちゃったじゃない——これ普通にユーくんのせいだからね!」「それオレせい!?」「あと忘れたの!? さっき中津にやらしい目で見られたんだから。ユーくんアンタいい加減にしなさいよ!」「もうそれオレ関係なくね!?」といった風に。
もちろん、爪乃はそれを冗談で言っているし、由丹生もそれをわかっている。
要するにボケとツッコミ。もっとも、ツッコミはいまいちキレがないと批判を受けているが。
「そういえばユーくんさあ……」
「うん?」
「聞くところによると、その仮入部する子の誰かには会ってるんだよね?」
「ああ。まあ、一応は」
言いつつ、由丹生は爪乃に視線を向けた。「何、興味でもあんの?」
「いや、ただチカちゃんの癇に障るような子が来たら嫌だなあ、って」
「そんなやつの入部を入枝が許すと思うか? 興味半分で来た同級生とか全員入部拒否したやつだぜ?」
「まあ……。でもユーくんいるじゃん?」
「喧嘩売ってんのかゴラァ!?」
といった風に。
今日も入枝美萩(いりえみはぎ)率いる部活——迷惑妄想部(めいわくもうそうぶ)は、荒唐無稽に意味不明に、大胆不敵にもほどがある、馬鹿馬鹿しいやり取りをしているのであった——