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Re: 雨音セレナーデ ( No.2 )
日時: 2010/12/20 17:17
名前: Varuna ◆ZdPdHqmtMA (ID: xJkvVriN)

一話「放課後セレナーデ」

「ねぇ、聞いた?また『ネオ』の政治家狩りがあったんだってよ。」
「聞いた、聞いた。マジ怖いよね〜。」
能力者のテロ組織“ネオ”
彼らが政治家狩りを始めたのは半年位前だった。
一ヶ月に一人のペースで“ネオ”のメンバーによって政治家が殺されている。
「ねぇねぇ、雨宮君は能力者なんだしさ、『ネオ』についてなんか知ってる?」
出た、“能力者なんだからなんか知ってるだろ”って話しかけて来るパターン。
「何で能力者だからってそんなこと知ってなきゃならねぇんだよ。」
椎也は能力者だから何だって言われるのがキライだった。
彼に限らず、能力者は皆化け物扱いされていた。
「良いじゃん」
わけわからねぇ。
「何か教えてよ〜。」
「知るか。」
いつもそうだ。
能力者が何か事件を起こす度に俺はクラスの女子に質問攻めにされる。高校生のくせに他にやること無いのかよ。
「おい椎也、次体育だぞ、着替えなくていいのか?」
彼は俺にとって唯一友達と言える幼なじみの新島馬博。
能力者ではないが、俺を能力者だからと意識したりはしない。
「そうだった。」

「お前は良いよなぁ、運動神経いいし、頭も良いし、顔も良い、…何より能力だし。」
馬博を睨むと、馬博は笑って。
「冗談。怒るなって。」
「怒ってねぇよ。」
馬博には感謝している。
彼のおかげで俺は人間らしい学生生活を過ごすことができている。
今は学校も変わってずいぶん減ったが、中学の時は馬博の協力もあって友達は多かった。
彼らも最初は、能力者って意識していたが、すぐにそんな意識は無くなり、一人の人間として話しかけて来る様になった。
本当に彼には感謝している。

しかし、彼にはまだ秘密にしていることがあった。
それは、詳しいことはわからないが、表面上テロ組織“ネオ”や、能力者の宗教団体と思われる“トム”に対抗するために能力者を集めて政府によって世間の裏で設立された“ゼロ”のメンバーとして人殺しをしていること。
これを馬博に言うと、生活が悪い意味で変わる気がするのだ。
既にニュースや新聞等で取り上げられていて、暴力団の様な類として世間には知られている。
ゼロのメンバーは、黒いフルフェイスヘルメットに全身黒い服、手には青白く光る日本刀の様な物を持っている。
一般人じゃないことは誰にでもわかる。
何故このような服装にしたのかは知らないが、犯罪者として世間に知られていれば、こちらも行動しやすいから悪くはない。
警察に捕まっても、すぐに政府の権限で誰にも知られることも無く釈放される。
だから、特に不便な点は無かった。

放課後、椎也は召集を受けて、東京の多摩にある多摩センター駅の近くにあるとあるゲームセンターにやってきた。
電話で言われた通りに、ゲームセンターの業務用の階段から地下に行き、薄暗い廊下を少し歩いたところにある塗装が少しはげた鉄の扉を開け、部屋に入った。
何も置かれてない殺風景な天井も壁も床もコンクリートに囲まれた部屋には、既にゼロのメンバーが集まっていた。
「遅〜い、何やってたの?待ちくたびれた。」
制服を着た女子高生が、目の前にやってきて、特に遅れたわけでもない椎也に説教をかました。
「別に遅れてないんだから良いだろ。それより、話しってなんだ?」
「ネオのこと。」