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Re: 鬼に惑わされし者 ( No.19 )
日時: 2010/12/24 11:35
名前: 愛鬼茱萸 (ID: CsDex7TB)

第三章  ≪両親≫

「っ!!!ひぃっ!!!ごめんなさい!!ごめんなさいぃぃ!!!」
びくびくと震えながら子供は僕の手から逃れようと身をすくめる。よほど怖い記憶でもあるのだろう。目の前の子供は可哀想なくらい怯えていた。
「?!お前本当に大丈夫なのかっ?!」
「いやだ……ごめんなさい…いい子に…いい子にするから殴らないで…っお母さん…お父さん…ごめんなさ…っ」
そのまま震える子供を僕はじっと見つめる。そっと背中に手を置き抱きしめると、嫌々をする子供に優しく話した。
「大丈夫。大丈夫だから…その…ここには僕とお前しかいない。お母さんもお父さんもいない…だから安心しな?…な?」
「…いない?二人ともいない…?」
「あぁ…いない。」

その言葉に子供はますます目に涙を浮かべる。震える手で僕の腕をつかむと嗚咽でしゃくりあげた声でぽつぽつと話し出した。

「お母さ…っお父…さんっ…消えちゃやだっ私…いい子にする!やだっ…私が…私がいなくなったらいいの…?私が…私が『女』で生まれてきたから…!!わたしはわるいこ…っふぇぇっ…」
そのままボロボロと泣く子供に僕は固まる。
「お母さんたち…何て言ったんだ?」
「っ!!!!お父さんっ…お父さん私が男の子だったら…戦に出たり…役に立ったりするのに…って いっぱいいっぱい殴られて…っ お母さんも…男の子だと家のこと色々…っ力仕事できるのにってっ!!」
「…もういい…もういいから…お前は何も悪くない。悪くないから…な?…いい子だよ…っ」
頬を伝う涙を指でぬぐってやりながら僕も泣きそうになった。