ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鬼に惑わされし者 ( No.41 )
- 日時: 2011/01/07 19:33
- 名前: 愛鬼茱萸 (ID: CsDex7TB)
第七章 ≪首斬り≫
—お前は僕が守ってあげる。すべてが…そう全てが終わったらあの場所で会おう。必ず迎えに行くよ…?…必ズ…—
「………ん……」
あの声は何だったか。もう忘れてしまったけれど…とても大事だった気がする。
甘くて…甘くて…とっても優しい声。けれど、どうしようもなく寂しくて…痛くて痛くて…胸が締め付けられるように重くて、息苦しくて重くて………ってあれ?お………もい??
「おはよーございますぅ。もうお昼ですよぉ歩武さん。」
「ッ???!!!!いきなり度アップで迫ってんじゃねえ!!!変な起こし方すんな馬鹿日向!!!」
手に小刀を持ち構えた歩武の部下…日向が馬乗りに跨りながら迫っているのを見て歩武は怒鳴る。ぐっと身を起こして日向を押しのけた。
「それにしても…歩武さんがうなされるなんて随分珍しいもの見たわぁ〜。怖い夢でもみたんですかぁ?」
「……うなされてた??」
「うんそうですぅ。何ですかぁ?歩武さん全然そんな感じしなかったんですかぁ??」
意外そうにする日向を尻目に歩武は寝巻用の着流しを脱ぎ捨てる。確かに着流しは汗を吸って重くなっていた。それをぽいっと放ると歩武は頭を軽く振る。素早く奉行所の服に着替えると、胡坐を掻いて日向に話す。
「…この頃忙しかったからそのせいでしょ?そういや日向お前報告書はどうしたんだよ。あの『首斬り』の…」
「あぁ、すっかり忘れてましたぁ。」
「何が忘れてただてめぇぇぇぇぇぇ!!!!俺言ったよなぁ?本当なら昨日中に欲しかったのに日向が今日にしてほしいって言ったから仕方なく今日にしてやるって言ったよなぁ?それをおまッ…」
「女なのに俺はだめですよぉ。…すいません明日にしてください。」
「何無駄に可愛い顔して言ってんのよ!!??これ以上待てねえって言ってんだろボケ!!!!」
「だってぇ、歩武さん面食いっしょ??性格より断然顔じゃねえかよいっつも…」
「日向本音思いっきり出てたから。ったく誰が面食いだ馬鹿日向!!」
そう言いながらも頭の中で何かを思い起こしているのだろう。歩武の顔がふっと緩んでいるのを見て日向は軽くため息をつく。素直じゃないんだからぁ〜と呟きながら頭を掻く日向に歩武は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「う、うるさいッ!!!あーもう報告書は私が書くから日向はさっさと要点を話せ!…んで?どんな様子だったの?」
そう言われて日向はまた軽いため息をついた。
「前のと一緒よぉ〜…やられたのは武闘派で知られる浪士の一団…この間役人らが幾人か殺されたあの一件に関わってた奴らですよぉ。逃げるのが上手くてなかなか捕らえられなくて困ってたんだけどぉ…」
「…で、やっぱ死体には首が無かったのか?」
「えぇ…いつもの如く首から上が綺麗に無くなってましたぁ〜。持ち物や体の特徴から奴らだとは認識できましたがぁ、やっかいですよぉ?首がないと身元が中々判断つきにくいものぉ〜。」
ため息まじりにそう語る日向に頷くと歩武は、発見者は?と低く訊ねる。その言葉に日向は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「何?発見者になんかあんの??」
「うぅん?…それが…」
続く