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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鬼に惑わされし者 ( No.5 )
- 日時: 2010/12/22 13:59
- 名前: 愛鬼茱萸 (ID: CsDex7TB)
第一章 ≪出会い≫
昔々のある一日。戦争の真っ只中。一日中人と人とが戦い 硝煙と血の死臭が消え去ることのない悪夢のような日常。幾度斬ったか知れない刀をさげ、真っ白な服や肌を血で染め上げた僕はいつしか敵はおろか仲間にさえ恐れられるような存在になっていた。
僕はただの人間なんだ、そんな恐ろしいものじゃ
ない…んだ…
そう言っても周りは僕を腫れ物をつつくようにしか扱ってくれなかった。
そんな日常に嫌気が差し、仲間が止めるのも聞かず月夜の晩に外に飛び出したときのこと…戦地を抜けまだ戦の火が回っていない森を僕はフラフラしながら歩く。ふっと森が開けた所に小さな神社が建っていた。古ぼけた上に苔むした石造りの鳥居の奥にはこれまた古ぼけた木造の境内。もう何年も掃除なんてしてないんだろう様子が瞬時に見て取れる状態だった。
ただ一つ。異様に大きい杉の木が境内の横に生えていて、それが異彩を放っていた。杉の木には太いしめ縄が巻かれていて 何かを祀ってあるらしい。僕はその大きい杉の根元に腰を下ろす。
…静かだ…こういう夜も悪くない…
「っく…うっ……く…ひっく……っ」
木にもたれて目を閉じた瞬間、細いすすり泣きが聞こえて僕はがばりと身を起こす。
(…冗談だろぅ…僕こう見えてデリケートだから、おばけ的なものはあまり好きじゃないんだが…)
嫌な気分になりつつも僕はそっと木の陰から声のする方向を覗き見る。どうやら幽霊なんかじゃないらしい。小さな人影…子供が境内の階段腰掛けて顔を覆って泣いていた。普段なら放っておくのだが、今日の僕はよほど感傷的になっていたらしい。僕はそっと立ち上がると子供の方に歩いていった。
「おい…どうしたのだ?」
「…!!!!」
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