ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鬼に惑わされし者 ( No.83 )
- 日時: 2011/01/27 21:03
- 名前: 愛鬼茱萸 (ID: nnVHFXAR)
第十五章 ≪騒動の後≫
「日向さん…終わりました」
奉行所内。
解剖室から検死を終えた役人と京香が、自分を呼ぶのを待っていた日向は、解剖室に入ると静かに問いかけた。
「………………………………で?死因は何だったのぉ……?」
「くッ……首からの大量出血です……おそらく傍にあった刀でやられたものだと思われまっ……何で歩武さんがっ!!!!!」
そのあとは嗚咽で声にならないらしい。
泣き崩れる役人を尻目に、日向は蒼白になっている京香に顔を向けた。
「…………京香ぁ。一体こいつはだれなのぉ?」
横たえられている歩武の死体の隣に置かれた、もう一つの死体に近づくと、日向は首を傾げる。
京香は震えながらも報告をした。
「……それが…この死体……死んでから約十年以上が経過してるんです。………なのに、この死体の胃には……ッ歩武さんの肉が残っていました……おそらく歩武さんが死んだあとに、その肉を食べたと思われます…」
「どういうことよ…」
「そんなの私が聞きたいですよ!!!!!!!!何でとっくの昔に死んでた死体が歩武さんを食べるんですか!!!!!!!ッ、理解できな……っ!!!」
「………………呪いかねぇ」
「は?日向さん何言って…」
「この人……前からおかしかったでしょ〜?発見者がいないってぇのに取調室に独りで篭ってたり、杉本の死体見た瞬間にどこかに走り去ったり…誰もいない空き家のクリニックにちょくちょく出入りしたり…ねぇ。まるで何かが見えてるような………」
それが何かと叫ぼうとした京香を、絶叫が遮る。
号泣した日向の父…昂助だった。
「歩武ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!!!!何でだぁ!!!!!何でお前がこんなっ……!!!!!!!!」
そのまま暫し昂助は、歩武を抱き上げて咽び泣いている。
嗚咽が響く中、日向は歩武の持っていた血まみれの煙管をポケットから引き抜くと、口に咥えて火をつけた。
「………………今となっては関係ない事だけどねぇ………………ねぇ歩武さん………やっぱあんたなんて嫌いよぉ………………こぉんなでっかい穴開けやがって………………ッ………!」
咽び泣く声に混じって、煙管の煙が一筋吹き上げられる。
苦い…と呟いた声もまた、涙に濡れていた…