ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 『神旅。』 ( No.3 )
- 日時: 2010/12/24 14:34
- 名前: 空駆ける天馬 (ID: U3CBWc3a)
- 参照: http://名前長いね……天馬でお願いします
【第1話 星の神コヨルシャウキ】
東京都 世田谷区
世田谷区の中心にある高級住宅街。2階建てのイタリアチックの家が規則正しくズラリと並んでいる。
そんな住宅街の中、赤い屋根の家の表札にはローマ字表記で「星宮」と珍しい名前が書かれていた。
「十郎、真奈、俺は行くからな。」
星宮家の長男であり警視庁で働く十郎の兄、一郎はスーツに鞄を持って自宅から出て行った。
「行ってらっしゃ〜い!!」
「ばいばーい、一郎兄ちゃん!!」
リビングで朝飯を食べながら一郎に言った十郎と中学3年生である真奈。2人でテレビを見ながらパンを食べている。
テレビは朝のニュースで盛り上がり、2人は黙々とパンを食べながらテレビを見ていた。
「十郎兄ちゃん、私は先に行くから。今日が始業式で生徒会だから急がないと……」
真奈は食べ終えると食器を台所に戻し、2階へと上がっていった。十郎も朝飯を終えると、台所に食器を戻す。
『朝から大変じゃね。』
「ん?コヨルか、お早う。」
十郎は台所の壁に寄りかかる白髪に黄色の目をした青年に言う。青年は星の神、コヨルシャウキだ。
コヨルは白髪を掻きながらあくびをすると、勝手に冷蔵庫を開けた。
「お兄ちゃん、行ってくるね…って、冷蔵庫閉めといてよ!!」
2階から制服姿で降りてきた真奈は、十郎に言うと足早に家から出て行った。真奈はコヨルに気付いていない。
『ったく、朝から忙しい家族じゃな。それで、十郎も学校なのか?』
「俺は明日からだよ。暇だし、母さんの墓参りに行く。」
十郎はそう言うと、2階に上がって自分の部屋に入る。十郎の部屋は一郎、真奈に挟まれるようにある。
十郎がドアを開けると、ベットの上にはコヨルが牛乳パック片手に座っていた。
「パックごと飲むなよ。最近、牛乳の減り方が尋常じゃない。」
『調達しといてやる。それより、母上の墓参りか……。もう、そんなに経つんじゃね……』
コヨルは牛乳パックを置くと、大きなため息をつきながら天井を見上げる。
『あの時は何もできんじゃったが……』
「コヨル。」
十郎は喋り始めたコヨルを止めた。コヨルは一瞬驚いた表情を見せたが、苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。
『す、すまん。』
「神なのに軽いね。まぁ、俺はそんなコヨルが好きだよ。」
十郎は有名なメーカーのパーカー、ジーンズに着替え、1階へと降りていく。玄関には、すでにコヨルがいた。
『それじゃあ、行くかの。』
「あぁ。」
2人は顔を合わせると、自宅から足並みをそろえて出て行った。
*******
杉並区 獅子ヶ浦墓地
世田谷区と杉並区の境目にある獅子ヶ浦墓地に、十郎とコヨルは来ていた。立派な墓石が百以上ある。
2人は歩いて墓地まで来ると、墓地の前にあるゲートに着いた。
「坊や、1人かい?」
「はい。」
『わしは無料じゃな!!!』
ゲートの前に立っていたか警備員は十郎に言うと、ゲートを手動で開けた。十郎は軽く一礼する。
2人は石の道をコツコツと歩くと、「星宮家」と書かれた墓石の前で止まった。小さく「優」と彫ってある。
「母さん、調子どう?」
『………』
墓石を洗いながら呟く十郎を見ながら、コヨルは拳を握りしめた。表情は歪み、なぜか怒りを堪えている。
十郎は花を添えると、無言のまま合掌した。コヨルも十郎の真似をして合掌する。
『十郎、お前の家族はわしが守るけんの。』
「……ありがとう。」
十郎はコヨルの言葉に笑顔になり、顔をあげた。墓石を見ると、ニコリと微笑む。
「それじゃあ、帰ろうか。」
『そうじゃな。』
2人は顔を合わせ歩き始める。そして、墓地を後にした。