ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 『神旅。』  ( No.4 )
日時: 2010/12/24 16:23
名前: 空駆ける天馬 (ID: U3CBWc3a)
参照: http://名前長いね……天馬でお願いします

【第2話 死と再生の神シぺ・トテック】


世界には、未だ知られていない土地もある______


だだっ広い太平洋に浮かぶ無数の無人島。本当に無人島であろうか?
ハワイの遥か西にある無人島。森が生い茂り、山がポツンとある。見るからには人が住める環境ではない。
島はゴツゴツした岩に囲まれ、船で上陸するのは不可能であろう。そんな島に、不気味な屋敷が建っていた。

「はいはーい!!!みんな集まって…」

2階建ての豪華な屋敷。枯れた草花の庭を越して屋敷に入ると、最初に目にしたのは床に落下したシャンデリア。
ガラスの破片が床一面に散らばり、真っ赤な絨毯は破れている。屋敷の玄関に、スーツを着た男性がいた。
男性は辺りを見渡しながら、不貞腐れてトボトボと歩く。歩く際に、ガラスを踏みつける音が鳴る。
「ったく、集まり悪いなぁ……」

『ショウガナイダロ?』

男性が歩いていると、2階の柵越しから誰かが見下ろしていた。
男は2階を見上げ、何者かに気付くと大きなため息をつく。
「シぺ・トテック。お前は黙ってろ。」
『フフ……。サイキン、オマエアセッテルナ。』


「うるさい!!!神だからって良い気に乗るな!!!」




『ソレハ、ドッチダロウナ?』




男は2階に向かって叫んだが、死と再生の神シぺ・トテックは男の後ろにいた。男は振り向き、後ろに下がる。
シぺは不気味に笑いながらウエーブヘアーを整え、ガラスが散らばった床に座りこむ。
「それより、他のメンバーはマジで来てないのか?」
『キテナイラシイナ。』
「ちくしょう……ここまで来るの結構時間かかるのに。」
男は舌打ちをすると、玄関の大きなドアを開けた。男の後ろから、シぺがついてくる。
2人は屋敷を出ると、枯れた草花が生い茂る庭を歩きながら、屋敷の庭を出ていく。その際、男は何かに気付いた。
「そういえば、残りの神魂の行方は?」
「サガシテイル。ソウカンタンニハ、ミツカラナイ。」
シぺの言葉に、男は大きなため息をつき、青い空を見上げた。雲が一つもなく、真っ赤な太陽が空の中央にある。

「まぁ、その内見つかるだろ。見つかった時、全てを終わらせる。」

男はそう言うと、シぺと共に屋敷のゲートを抜けたのだった。


   *******


東京  獅子ヶ浦墓地


十郎とコヨルは墓地を後にして、駅のホームで帰りの電車を待っていた。夕日が十郎の影を壁に映す。
『帰ったら何するのじゃ?』
「明日が始業式だし、学校の用意。」
『そうかぁ…。それじゃあ、それが終わったらゲームじゃ!!』
「いいよ。」
コヨルと他愛もない喋りを交わす。だが、他の人から見えれば、十郎が1人で呟いているようにしか見えない。
コヨルの説明によれば、神魂を宿している亜人にしか見えないらしい。


ファーン!!


ホームにアナウンスが響き、電車がブレーキ音をあげて止まった。2人は電車に乗り込むと、ガラガラの席に座る。
『電車はいいのぉ。楽じゃけん、誰もおらん!!』
コヨルは背伸びをしながら、座席に寝転がる。確かに十郎とコヨルの乗る車両には、人が誰もいない。
それは愚か、この電車にはだれも乗っていない。
十郎は不思議に思い、辺りを見渡す。遥か向こうに運転手が見えるが、どう見ても服装が違う。
黒いコートに真っ赤な髪、後姿だけで運転手ではないことが分かった。
「コヨル、この電車おかしい……」
『わかっとる。』
コヨルは起き上がると、運転席に方に目を凝らす。すると、ニヤリと笑って十郎を見た。


『十郎、敵じゃ。』